東京五輪は、アスリートたちを救うか? “大学一”でも就活に苦戦する、選手たちの近未来

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3年前に行われた世界ジュニア選手権では、先に挙げた飯塚が男子200mで日本勢のスプリント種目として初の“金メダル”に輝き、ディーンも男子やり投げで銀メダルを獲得。そのほかにも、男子400mの安部孝駿(中京大)が銀メダル、男子走り高跳びの戸邉直人(筑波大)と女子1万m競歩の岡田久美子(立教大)が銅メダルを手にした。

入賞数(8位以内)は16を数えて、ポイントで63点をゲット。総合で「世界7位」という史上最高の成果を収めている。現在の大学4年生は日本陸上界にとって“プラチナ世代”とも言うべき学年なのだ。

世界ジュニアに出場していないが、モスクワ世界選手権の男子棒高跳びで「6位」に入賞した山本聖途(中京大)もプラチナ世代のひとり。2020年東京五輪では「メダル」を狙える逸材だが、多くの企業から熱烈歓迎されているわけではない。就職先は決まりつつあるというが、まだ「内定」には至っていない。

世界ジュニアで銅メダルを獲得している男子走り高跳びの戸邉直人(筑波大)も就職先が決まっていない選手のひとり。9月の日本インカレでは、2m28の大会タイ記録で優勝。モスクワ世界選手権の参加標準記録B(2m28)に相当する記録をクリアした戸邉は、2020年の東京五輪をチャンスと考えている。

「東京五輪は“就活”のアピールになると思います。世界大会を狙える記録を残すことができましたし、これから本格的に就活するつもりです」

戸邉は地元・千葉県野田市に本社を置く大手食品メーカーなどに自らを売り込みに行く予定だという。多くのアスリートは、夢をかなえるために、その環境を自分で整備しなければならないのだ。

陸上競技の場合、大学を卒業した後も、ほとんどの選手が母校でトレーニングを積んでおり、ハード面での費用はそれほどかからない。生活に必要なおカネと合宿・遠征費があれば、競技に十分集中できる環境が整う。それが企業の広告費として、高いのかは正直わからない。また、陸上競技以外にも、金銭的なサポートを必要としているアスリートはたくさんいる。

2020年東京五輪では、「会社から日本代表を──」。そんな夢を一緒に見てくれる企業が増えれば、日本スポーツ界の未来は明るくなるはずだ。そして、学生アスリートはくじけずに就職活動に励んでほしいと思う。あなたの“夢”は日本国民の“希望”でもあるのだから。
 

酒井 政人 スポーツライター

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さかい まさと / Masato Sakai

東農大1年時に箱根駅伝10区出場。現在はスポーツライターとして陸上競技・ランニングを中心に執筆中。有限責任事業組合ゴールデンシューズの代表、ランニングクラブ〈Love Run Girls〉のGMも務めている。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』 (oneテーマ21) がある。

 

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