会社に閉じこもる大人は1ミリも成長しない 長時間労働の是正が育児との両立につながる

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出口:ということは、需給をマッチングしないと、経済は伸びないわけです。その割に、日本の企業経営者の中に占める女性の割合はまだまだ少なすぎます。「女性が輝く社会」にするだけではなく、役員会に4割以上女性を入れなくてはいけないクォーター制のような制度を導入するくらいのことをしてもいいと思います。

中原:人手不足という観点でいくと、働き方の改革によって長時間労働を是正していかない限りは、やはり「仕事と育児との両立ができない」ということで離職せざるをえなくなります。実は今、パーソル総合研究所さんと長時間労働についての共同研究をしています。その中に、長時間労働と介護の関係についての質問項目があるのですが、僕たちは、長時間労働は介護を疎外するという仮説を検証しようとしています。

調査結果は、2018年2月に公開される予定です。もしこの仮説が「真」だとすると、高齢化が進み介護人口が増えるなかで、このまま長時間労働が是正されなければ人手不足に陥っていくのは火を見るよりも明らかです。

僕は、今言われている人手不足や長時間労働是正の問題は、日本企業、日本社会が総出で解決しなければならない経営課題であり、社会課題だと思っています。

出口:そのとおりです。それがそう見られていないのは、単に日本の経営者のリテラシーが低いからですよ。

中原:それは、出口さんにしか言えないお言葉です(笑)。

「働き方改革」で本当に改革すべきこと

出口:「経営者のリテラシーが低い」などと生意気なことを言いましたが、実際、日本の大学進学率は2012年のOECD各国平均の62%に対して日本は51%と、決して高いとは言えません。大学に入ってもみんなあまり勉強しないですしね。これは、企業が成績採用をしないからです。グローバル企業は採用の際に成績を見ますから、しっかり勉強しますよ。

中原:おっしゃるとおりです。採用時にプラスになるとわかっているから、大学院に行く人も多いです。日本の場合、教育機関でしっかりとした専門性を身につけ、仕事に直結させるという考え方が、まだまだ弱いですね。

出口:大学で勉強してこなかったうえに、社会人になって長時間労働をやっているということは、遅くまで残業して飲みに行くわけですから、全く賢くならないわけですよ。だから、賢い経営者がなかなか育たない。

中原:確かに。大学の問題もさることながら、僕がいちばん思う長時間労働の弊害は、社会人になってから学び直す機会がないということですね。

出口:残業せずに学ぶ時間を取るのがいちばん出世の近道なのですけれどね。先日、某大手企業で史上最年少の人事課長になったという出世頭の人にお会いしたのですが、この人の話がとても面白くて。新卒1年目は毎晩9時、10時まで働き、毎晩先輩に飲みに連れていかれるような生活だったそうです。

ぼんやりと1年を過ごし、正月休みにふと振り返ったら、入社以来、1ミリも成長していない自分に気づき、1月4日以降、「もう酒を飲みに行きません」と宣言したそうです。その時間を勉強時間に充てたことで彼は抜擢されたのだと話していました。

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