会社に閉じこもる大人は1ミリも成長しない 長時間労働の是正が育児との両立につながる

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中原:本当そのとおりですね。長時間労働でいつも同じ人と飲んでいて、成長するはずがない。さらに通勤時間も長すぎます。ある調査によると、今、首都圏の通勤時間平均が片道で58分なのだそうです。

浜屋:往復で約2時間、週5日通勤すると10時間と言われると、結構な時間のムダですね。

中原:そうなんです。ただ、その貴重な時間をスマホゲームなどに費やしている人も多いです。

浜屋:本でも読めたらいいですが、朝は満員電車でぎゅう詰めです。夜は仕事が終わってくたびれていたり、お酒を飲んだ後だったりします。手元でスマホをいじるくらいが、ちょうどよかったり……。

中原:疲れきっていて勉強ができないということも確かにあります。ただ、外の世界に出て越境することもなく、非常に親和性の高いコミュニティの中で、同じ人たちと長期にわたって、居心地よく生きてしまうというのが、もう1つの根源的な問題かなと思っています。僕は2004年から2年間、ボストンに留学していた経験があります。

そこで出会ったハーバード大やMIT(マサチューセッツ工科大学)の人たちは、確かに優秀な人たちでしたが、日本人と比べて飛びぬけて優秀かというと、「優秀さ」という意味ではそれほど変わらないな、という気がしました。

出口:人間それほど差はないですよね。

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中原:でも、1つ大きく違ったのは、みんな「何かを変えてやる」と本気で思っている度合いがすごいんです。みんな自分の専門性や自分の領域に閉じこもるのではなく、あえて、大学院などに飛び出して、本気の本気で「何かを変えてやろう」と信じている。

自分の村に閉じこもるのではなく、外の世界に出て勝負をする。「政治を変えてやる」とか「障がい者に対する偏見を変えてやる」とか本気で思う。そういう人たちに囲まれていると「俺もなにか変えなくちゃダメだ」みたいな気持ちになってくるのです。みんなで高め合っていこうとする、そこがもう、全然違いましたね。

浜屋:環境の影響は大きいですね。家と会社を往復し、毎日同じような人たちと会っているだけでは、刺激もないし、視野を広げることができません。これからは、子育ての経験なども含めて、会社以外での経験も成長機会として考えていきたいですね。本当に改革すべきなのは、大人の学び方なのかもしれません。

出口:そうですよね。やはり「人、本、旅」で視野を広げていけるような環境を作っていかなければいけませんね。

井上 佐保子 ライター

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いのうえ さおこ / Saoko Inoue

通信社、出版社勤務を経て、2006年にフリーランスライターとなる。ビジネス誌、専門誌を中心に、企業の人材育成、人材マネジメント、キャリアなどをテーマとして、企業事例、インタビュー記事などを執筆。

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