会社に閉じこもる大人は1ミリも成長しない 長時間労働の是正が育児との両立につながる

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出口:そのあたりの状況も少しずつ変わってきています。小さい企業でしたが、子連れ出勤OKな企業を見学したことがあります。子連れ出勤OKにするためには、ものすごくおカネをかけてオフィスを変える必要があるのではないかと思われますが、その会社の社長さんは「ドアを1つ追加して、机の角に気泡緩衝材(いわゆるプチプチ)を貼ったくらいで10万円もかからなかった」と言われていました。

浜屋:子どもが頭をぶつけても痛くないように、机の角に緩衝材を貼ったのですね。工夫次第で簡単に子育て対応オフィスにできるというわけですね。設備以外の部分ではどうでしょうか?

出口:「子どもが騒いだら仕事ができないのでは」と思われますが、子どももちゃんとわかっていてあまり騒がないのだそうです。社員が順番に遊ばせたりするうち、「子どもは要らない、私は一生独身で働く」と言っていた女性が、「結婚はともかく子どもだけでも作りたい」と言うように変わってきたそうですよ。

中原:研究室に取材に来られる方や大学院生の中には、「子ども、連れてきていいですか?」という方が結構います。僕の研究室には「おもちゃ」とかも置いてあるので、子どもたちに「遊んでていいよ」と言うと意外とおとなしく遊んでくれますよね。

「人、本、旅」の生活をするべき理由とは

中原:今、「働き方改革」も盛んに言われています。

出口:働き方改革が必要な理由は簡単です。日本は今、世界でいちばん高齢化が進んでいます。そのため、予算ベースでみても、介護等で年に5000億円以上のおカネが新たに必要になってきます。そうなると、みんなで貧しくなるか、GDPを上げるか、二択しかありません。そして、GDPは労働力人口×生産性です。

浜屋:少子化で生産年齢人口が減ることが確定している以上、労働力人口をなんとか維持するためには労働参加率を高めることが必要となりますね。そのためには、出産や育児などのライフイベントをきっかけに仕事を離れてしまうことも多い女性たちに、もっと働いてもらうしかない。そうした政策的な必要性から「女性活躍」と盛んに言われ出した、という側面が大きいわけですよね。

出口:はい。ですが、労働力人口を増やすのにも限界があります。結局は、貧しくなるか生産性を上げるかしか手がありません。ではどうするか。製造業の場合は長時間働けば生産性は上がります。トヨタはピーク時には3交代で24時間生産ラインを動かしていました。工場労働の場合、機械を動かせばいいわけですから、それほど脳を使いません。

今はサービス産業が全産業の4分の3を占めています。サービス産業では頭を使うしかないわけですが、頭を使う仕事は2時間が1回の集中力の限度であり、休憩を入れても1日2時間×3セット程度が限界であるというのが、今の脳学者の常識だそうです。だから長時間労働をしても生産性を上げることにはつながらない。

しかも、新しいアイデアは人に会ったり、本を読んだり、現場へ行って脳に刺激を受けなければ出てこない。だから僕は、生産性を上げるためには「飯、風呂、寝る」の生活ではなく、早く帰って「人、本、旅」の生活をするべきだと思っています。これが働き方改革を進めるべき理由の第1点です。

浜屋:総務省の労働力調査によれば、このところ製造業の男性雇用者が減少する一方、医療・福祉や小売・卸売業などの女性雇用者が増加しています。これらの業種での人手不足感は依然高まると予想されています。産業構造の変化の面から見ても、働き手としての女性への期待は、より一層高まっているといえますね。

出口:そのとおりです。世界中のどんなデータを見ても、サービス業のユーザーの、6~7割が女性です。デパートへ行ったら一目瞭然です。メンズ売り場はちょっとしかないですよね。

中原:メンズは8階くらいまで行かないとないですよね。1階、2階は確実にレディスですね。

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