調達額300万円に落胆したベンチャーの誤算 仮想通貨使う国内初のICOが不発だったワケ

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メタモのICOが少額に終わった理由は大きく2つある。1つはトークンの価値上昇というストーリーをうまく伝えられなかったことだ。

インターネット上で公開されトークン購入の判断材料となるのが、「ホワイトペーパー」と呼ばれる文書だ。事業展望や調達資金の使い道などが記載されている。

「ゼロから分かるビットコイン」特集では、実際のホワイトペーパーを外部の識者に論評してもらった。評者は、日本デジタルマネー協会代表理事の本間善實氏、創法律事務所代表弁護士で日本ブロックチェーン協会顧問の斎藤創氏、『海外ETFとREITで始める インカムゲイン投資の教科書』などの著書である投資家の玉川陽介氏である。

メタモのホワイトペーパーも読んでもらったが、トークンの価値上昇については3人ともに否定的な見方だった。事業の将来性を問う以前に「ホワイトペーパーを読んでもトークンの価値の源泉が何かがよくわからなかった」(斎藤氏)とする指摘も出た。

メタモが目指す「個人が持つスキルの可視化」  

メタモが目指しているのは「個人が持つスキルの可視化」だ。

求職時に個人は自分の職歴をアピールすることになるが、就労実績を証明する情報は多くの場合、それまでに勤めていた企業が所有・保管している。そのため個人自らが出せる情報は客観性に乏しくなる。フリーランスやパートタイマーだと、出せる情報がそもそも少ない。

結果として、企業は試用期間を設けたり賃金を一定期間安く設定したりして様子をみることになる。個人はその不利益を受け入れざるを得ない。

そこでメタモは労働者自身がスマートフォンのGPS(全地球測位システム)位置情報を用いて勤務状況を記録する仕組みを作った。今後はこの仕組みをベースに就労実績が証明できる人を企業に紹介していくというサービスも計画している。企業が紹介料を支払う際にメタモの発行するトークンを使えるようにするなどして、トークンの利用範囲と価値を高めるという。

ただ、取材を通じてもメタモが発行するトークンの価値がどう上がっていくのかは正直わかりにくかった。そのような指摘については、「関係各所との調整も必要なことからホワイトペーパーには記せないことも多かった」と佐藤氏は説明する。

前述した評者の指摘には次のようなものもあった。

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