「音声検索なんて恥ずかしい」と思う人の盲点 日本はスマートスピーカーで出遅れている
象徴的な例で言うと、iPhoneが日本で発売されたタイミングの反応が象徴的です。
iPhoneの日本での発売は2008年。2007年に先行して発売されていたアメリカでの盛り上がりは日本にもメディアを通じて届いてはいましたが、日本でiPhoneを待ち望んで熱狂していた人たちがいた一方で、「日本でiPhoneははやらない」と懐疑的な専門家も多数いました。
当時、日本は後にガラケーと呼ばれるようになってしまった日本独自のフィーチャーフォンが普及しており、スマートフォンで実施できる行為の多くがすでに実現できていたため、現在のように日本が世界でも珍しいほどのiPhone大国になることは想像がしにくかったわけです。
今でもスマートフォンに苦手意識を持ってガラケーを使い続けているユーザーが日本にはまだまだ多数いることを考えると、実際に当時の日本のユーザーにiPhoneを買うかと質問したら多くの人が後ろ向きな回答をしていたはずです。
想像ができないから、前向きな回答のしようがない
こうした新しいイノベーションに対する市場調査というのは、得てしてネガティブな結果になりがちです。
実際に、SNSが普及し始めた時期に、「あなたはSNSを使いたいと思うか?」と質問された多くのネットユーザーが「使いたくない」と回答していましたし、Facebookが普及し始めた当初は、実名やプロフィール写真の文化は日本では根付かないと否定する人が多くいました。
また、海外で自撮りが流行し始めたときにも、日本人はシャイだから自撮りははやらないという意見が多くありましたが、現在のインスタグラムでの自撮り人気やユーチューバー人気を見れば、必ずしも「日本人は自撮りをしない」というステレオタイプな分類が正しくないのは明白でしょう。
スマートフォンの普及によってガラケーも徐々に市場から姿を消しつつありますが、そのガラケーにおけるネットサービスの草分けであるNTTドコモのi-modeも、開始した当初は誰が携帯電話でメールやインターネットを使うんだと鼻で笑われることが多かったそうです。
iPhoneにしても、i-modeにしても登場したばかりの頃は、多くの利用者がその後のブームを予想できなかったわけです。
結局のところ、人間は自分が体験したことのない新しいイノベーションについてアンケートで聞かれたところで、想像ができないから前向きな回答のしようがない、というのがこの手の市場調査における現実といえるでしょう。
こうした市場調査による思い込みは、一利用者にとっては大した話ではありませんが、ビジネス側の判断をしなければいけない企業にとっては、深刻な事態を招くリスクがあります。
PCインターネットの世界で市場シェアを握っていた企業が、i-modeのようなケータイインターネットへのシフトに乗り遅れてビジネスチャンスを逃したという事例は多数存在します。そのケータイインターネットの世界でトップシェアや高収益を誇っていた企業が、スマートフォンへのシフトに乗り遅れてトップの座から追われたり、収益モデルを失ってしまったりしたという事例も多数あります。
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