AIスピーカーに透ける「ポストスマホ」の潮流 グーグルはなぜハードウエアを販売するのか

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――10月に発売された「グーグルホーム」や年内に発売予定の「アマゾン・エコー」など、日本でも音声認識デバイスが増えています。すぐに思い浮かぶのは天気を確認したり、音楽をかけたりといった使い方ですが、これ以外にも用途は拡大していくのでしょうか?

米国では日本より先に音声認識デバイスが発売されていて、その用途が拡大している。われわれは米国の音声認識データ分析会社に投資をしているが、米国では音声認識デバイスを通じたeコマース(EC)が増えてきている。

また、フォード・モーターは来年から出す自動車にアマゾンの音声認識サービス「アレクサ」を搭載することを発表していて、音声によるエンジンの始動やキーロックの開閉、ナビゲーションの操作などができるようになる予定だ。

では、音声認識の次のインターフェースは何か。米国のテック企業のイベントでは、そのヒントが出てきている。たとえば、フェイスブックは脳波から読み取る「ブレインインターフェース(脳認識)」の研究を進めている。

「小売り段階を飛ばす経路が増えている」

――流通の世界にも大きな変化が起きているそうですね。

ECが始まってから約20年が経ち、全小売りの10%がECとなった。アマゾンは米国の全ECの4割以上を占める非常に大きな存在となっているが、レジなしのリアル店舗「アマゾン・ゴー」の取り組みや自然食品スーパーのホールフーズ・マーケットの買収からもわかるように、残りの9割の市場であるリアルの小売市場にも進出してきている。

一方で、D2C(Direct to Consumuer、メーカーから顧客への直販)の流れも強まっている。これまではメーカーがいて、物流があって、小売りに商品が並んで、顧客が選んで買うという構図だった。このうち、小売りの段階を飛ばす経路がこれまで以上に増えてきている。

このようなD2Cの世界ではマスマーケティングが必要なくなる。たとえば原価が低いひげそりのような商品では、大量のCMを流すことで認知度を高め、小売りの場で顧客に選んでもらっていた。

しかし、D2Cのプレーヤーはこのようなマーケティングコストをかけず、クオリティの高い商品を低価格で直接顧客に販売している。D2Cの成功のカギはSNSによる顧客とのつながりで、インスタグラムやツイッターなどオープンなSNSの普及率が日本以上に高い米国が先行している。

あらゆるメーカーが顧客との接点を近づけざるをえなくなり、安売り勝負でユーザーIDを持っていないようなビジネスモデルは今後成り立ちにくくなってくるだろう。メーカーはモノづくりをしていればいいわけではなく、アマゾンのプライム会員のようなユーザーの囲い込みが重要になる。

――D2Cでの成功例はもう出てきているのでしょうか?

米国ではアパレルや寝具、旅行用バッグなど、あらゆるカテゴリーで出てきている。

たとえば、キャスパーというオンライン専門のマットレスの会社。店舗を持たずオンラインのみで直販するため、非常にクオリティの高い商品を低価格で提供することができている。100日間使った後でも返品を保証するという売り文句で商品の信頼性を訴え、創業3年で年商100億円規模にまで急成長している。

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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