栃木県警のスゴすぎる「押収品陳列」の真相 販促のプロが絶賛、そのテクを徹底解説

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最後に、リピテーション(繰り返し)を紹介しよう。同じパターンを複数回繰り返すことで、見る側にストレスを感じさせず、中身を強く印象づける手法だ。リピテーションによりボリューム感と複数あることによるリズム感が生まれ、全体としての視認性が高められる。今回で言うと、2つのボールの山と横一線に並ぶ新球の箱がそれにあたる。

もし、売り場改善コンテストのように警察署の陳列テクニックを競うイベントがあったとしたら、今回の陳列は文句なしに高得点で上位に入賞するはずだ。それだけ、素晴らしい数々の陳列テクニックを披露しているのだ。あえて改善点を挙げるとすれば、中央のバットをらせん状に多く並べること。これにより、注視度を上げるのも手であると講評をしたくなった。

栃木県警に「スゴすぎる陳列」の理由を直撃

栃木県警宇都宮東署に「なぜ押収品展示にVMDが使われているのか」について取材を行った。すると意外な答えが返ってきた。

「特に商品陳列のテクニックがわかる者はおりません。多くのボールを並べるために、四角い枠を使ったので、たくさん積むと自然とピラミッドの三角形になりました。ボールの数が多いので、1つの山よりはやはり2つだろうと。また、10円玉の平等院のデザインが、きれいな左右対称だったので、参考にはしました」(広報担当者)という。押収品を陳列した署員の中に、高級ブランド店やブティックからの転職者がいると思っていただけに、拍子抜けしてしまった。

しかし、この陳列からは第一に被害者感情を慮り丁寧に証拠品を扱う署員の姿勢が感じとれる。かつ、一般市民に盗難品が大量であった実態を理解してもらいたい想いがあったのだろう。その願いが、自然と高いレベルの陳列へと結実したのではなかろうか。

新山 勝利 研修講師、マーケティングコンサルタント

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にいやま しょうり / Shouri Niiyama

専門領域は店頭マーケティング、購買心理プロセス、顧客満足度。飲食店のコンサルティングでは、点数を分析したデータ主義で売上向上を図り「食べログ」の評価3.50点達成を推進する。顧客満足を高める販売促進、店舗の活性化や売場づくりのためのノウハウを提供。メーカーや全国の商工会議所などの団体、広告代理店、卸売、量販、チェーン店などが主要顧客。他業界の成功事例を用いて、写真や図表を活用した説明を行う。世界30カ国、150都市を歴訪。中でもフランス・パリには30回訪問。諸外国の先進的な産業事例にも造詣が深い。多数の専門誌に執筆するほか、各種マーケティング学会で論文発表。著書に『売れる商品陳列マニュアル』(日本能率協会マネジメントセンター)など。公式サイトはこちら

 

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