高騰したビットコイン相場はいつか崩壊する 今後の展開は政府の政策に左右される

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だが、ビットコインが中央銀行発行通貨に取って代わるようなことがありうると思ったら、大間違いだ。仮想通貨による匿名決済を部分的に許容するのと、それが大規模に行われるのを許容するのとでは話がまるで異なる。仮想通貨による匿名決済が大々的に行われるようになれば、税金の徴収や犯罪対策は極めて難しくなる。

もちろん高額紙幣を発行すれば、それによって脱税や犯罪のリスクが高まるのも確かだ。しかし、仮想通貨と違って、現金は少なくとも物理的にかさばる。

日本の実験はどんな展開を見せるか

日本の実験がどんな展開を見せるかは興味深いところだ。日本政府はビットコインの取引所に対し、犯罪活動の監視や口座保有者に関する情報収集を義務づける意向を示している。だが、世界を股にかけて活動する犯罪者が正体を隠してビットコインを取得し、日本の口座を通じてマネーロンダリングしようとするのは間違いない。国境を越えて紙幣を持ち出したり、持ち込んだりするのは、犯罪者にとって大きなコストだ。日本は仮想通貨を受け入れることで、スイスのような租税回避地となるリスクを背負い込んだのである。

仮にビットコインから匿名性がはぎ取られれば、現在のような高値は正当化できないだろう。

大事なのは、中央銀行が自前のデジタル通貨を発行したり、仮想通貨との戦いに勝てるように規制を変えたりするのを、誰も止めることはできないということだ。通貨の長い歴史が教えるように、民間が新たに生み出したものは、最終的に政府が規制し、自分のものにしてしまう。仮想通貨が同じ運命から逃れられると考える理由は、どこにもない。

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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Kenneth Rogoff

1953年生まれ。1980年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。1999年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001〜03年にIMFのチーフエコノミストも務めた。チェスの天才としても名を馳せる。

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