セイラーの行動経済学、異端の学問が大活躍 次のノーベル経済学賞は「フィールド実験」か

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「心理会計」とは、人々がおカネを管理することを考える際に支出する項目を区切って決めたり、1日ごとに区切って計算したりすることである。たとえば、競馬で賭けている人は競馬場側の取り分があるので平均的にいってだんだん負けが込んでくるが、1日の最後のほうになると元を取り返そうとして大穴に賭け、かえって大損する傾向があるといった風である。

セイラーを含め行動経済学の大家たちが行った研究として、ニューヨークのタクシードライバーのデータを使ったものが有名である。これは個々のドライバーの運転記録を用いて、客が捉まえやすく収入があげやすい日には彼らは早めに仕事を切り上げる傾向があることを明らかにした。収入が得やすい時に働くのが合理的なので、これはタクシードライバーが非合理的な行動をとっていることを意味しているように見える。

この結果を心理会計は、タクシードライバーは1日の売り上げ目標を設定していてそれを達成すれば営業をやめると解釈する。その行動は非合理的なのだろうか。1日の売り上げ目標を持つことはセルフコントロールが簡単ではない普通の人間にとっては当然必要な行動なのだと、セイラーらは主張する。自己規律なしには人間は堕落し、サボってしまうことが目に見えているからである。

保有効果=「保有しているものを失いたくない」

カーネマンらとともに発見した、自分が保有しているものを高く評価するようになるという「保有効果」も広く知られている。自分が持っているマグカップを手放してもよいと思う値段は、自分がそれと同じものに支払ってもよいと考える値段より何倍も高いということが、経済実験で発見された。

経済学的には個人にとっての物の価値は決まっているので、その人の売り値と買い値はほぼ等しいはずである。「保有効果」は驚くべき実験結果であり、私も直感的にはなかなか納得できないでいる。保有効果が働くと、野球チームの交換トレードのような「物々交換」が成立しにくくなるだろう。ただしチームの事情によって同じ選手の評価が違うので、トレードは起こりうるのだが。

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