日本企業は「CSR」を見直す時期を迎えている これから必要なのはサステナビリティ
髙尾:僕らの工場はテキスタイルの染色工場のすぐ横にあって、その工場に販売しています。当社のバイオエタノールの製造タンクから直接染色工場にパイプでつながっていて、ボイラーなどの燃料として使われているんです。
ウィンストン:古着から作った燃料で、新しい服を作っているわけですね。すばらしい!
アパレルだけではなく石油や自動車業界などでも、すでに多くのグローバル企業が、何兆円も新しいテクノロジーに投入しています。それに再生可能エネルギーを使用する企業も、確実に増えていますよね。価格が乱高下せず、長期契約を結びやすいからという理由です。
つい100年ほど前には、人は車ではなくて馬に乗っていた。それと同じで世界の常識が変わってきているんです。繊維やエネルギーに限らずあらゆる分野で。
投資家も関心を持っている
髙尾:僕らの会社の初めの資本金はたった120万円でした。共同創業者で当時営業マンだった岩元(美智彦)さんが100万円、大学院生だった僕が20万円。それが今は約15億円になりました。
ウィンストン:それはすごい成長だ。
髙尾:10年かかりました。でもそれができたのは、僕らの事業を信じた投資家がいたからです。彼らの投資があって、技術開発や新工場の建設に着手できた。ただ、投資家たちがサステナビリティに配慮するようになったというわけではないんです。彼らは今でも資本主義的だし、「売り抜く」ことを重視していることには変わりません。でも売り抜く方法として、サステナビリティに投資してもいいと思い始めている。10年前にはなかったことなんじゃないかと思います。
ウィンストン:おっしゃるとおり、彼らはあくまでおカネを追う人たちです。ただエネルギーや原料については、ある閾値を超えれば、おカネの流れが急激に変わるでしょうね。そのときに技術を持っていれば、投資は集中するはずです。
髙尾:事業をするなかでも、サステナビリティがビジネスとして成立することを感じ取っている人は、徐々に増えてきていると感じます。
ウィンストン:とはいえ、企業や投資家の変化のスピードは、人類が直面している環境の変化には追いついてはいません。企業は簡単にできることから始めてしまいがちですが、その方法では間に合わない。もっと大胆な転換が必要です。私はこれを「ビッグ・ピボット」と呼んでいるわけですが、いち早く気づいた企業は、根本的に経営戦略を方向転換させていますね。
イギリスの元首相ウィンストン・チャーチルは、「アメリカ人は正しいことを行うと期待していい。ただし正しいこと以外のすべてをやり尽くした後だがね」という名言を残しています(笑)。アメリカ人に限らず人類全体として、正しいこと以外をやり尽くした後の転換点をわれわれは迎えているのではないかと思っています。
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