「自衛のため」と言いますが、これだけ簡単に銃(しかも軍用銃)が手に入るとなると、おかしなやつが持つリスクも非常に高くなることは明らかでしょう(余談ですが、外国人旅行者でもその気になれば銃を買える州もあります)。
不法労働者を取り締まっているよりも、銃の所持そのものを規制するほうが先ではないか、という議論は昔からアメリカでもあり、今回の事件は再びそういう議論を巻き起こすことになるでしょう。トランプ大統領が全米ライフル協会との関係から引き続き銃の所持をフリーに認めるつもりなのか? 新たな問題がまた噴出した、と言っていいでしょう。
誤解している方が多いのですが、元来アメリカ憲法で保障されている銃の所持は自衛のためではありません。あくまでもふざけた政府が出てきたときに国民がその政府を力ずくで倒す手段としての銃の保持が認められているので、ここは建国の根幹にかかわる部分だけにそう単純な話ではないのです。ただ、こうなってくるとさまざまな規制が必要なことはもう明らかで、トランプ大統領の指導力が再び問われます。
中身のない減税案を出してきたトランプ大統領
話は変わりますが、トランプ大統領が減税案を示しました。(参考のために、一応「全文」を載せておきますが、正直中身は見る価値がありません)。
こんなものが、実現可能なのかどうか、まったく意味不明で、すでに共和党内でも意見が紛糾しています。ただし……大統領就任からすでに9カ月、何1つ法案を通しておらず、またそれらしいものも出していない大統領からすると、初めて「ちゃんと形になったものが出てきた」、ということは確かです。内容はともかくも、とにかく形になったものが初めて出てきた(それはそれで、実に情けない話ではありますが……)。
さらに、これまでのようなツイッター上のつぶやきの延長線上にあるようなものを、唐突に出してきたわけではなく、一応 共和党の「Big 6」 といわれる関係者の目を通してまとまってきた、という点でも画期的といってもいいかもしれません。Big 6という言葉は、日本のメディアではまだ浸透していませんが、アメリカではごく普通に使われている用語なので、読者の皆さんはご存じであったほうがいいと思います。ここでいうBig 6とは、ポール・ライアン下院議長、下院歳入委員会のケビン・ブレイディ委員長、ミッチ・マコネル上院院内総務、上院財政委員会のオリン・ハッチ委員長、スティーブン・ムニューシン財務長官、そして国家経済会議(NEC)のゲーリー・コーン委員長の6人、となります。
まあ今回の場合は、重要なメンバーのコンセンサスは取れている、という点が重要で、これまでのものとはちょっと違う、ということになりましょう。しかしながら、いわゆる財政緊縮の原理主義派といわれるフリーダムコーカス(自由議員連盟)の連中は1人も入っておらず、彼らだけでも40人近くいることを考えれば、オバマケア廃止法案と同様に葬り去られる可能性は低くない。もし、この法案が成立しなければそれこそ「何もできない大統領=口先男」の汚名を着せられ、早くもレームダック化する可能性すらあるので、この法案の行方は極めて重要です。
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