AIは就活生をどこまで「便利」にするのか レコメンドで補助、自己PRもしてくれる時代

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このロジックだと、理論上、無限大のバリエーションで、その人の次の行動を計算できますし、精度も9割くらいまで上げられています。さらに、就活を進める中で大手企業から中小企業へ、あるいは、当初の検討業種から別業種へなど、タイミングによって刻々と変化する個人の志向を追いながら、その時々に適切なレコメンドをすることも可能になりました。

一方で、本人が自分の志向に沿って企業を選んだ場合も、レコメンド結果に従って企業を選んだ場合も、応募する企業が本人の志向の範囲から外れることがないため、「実は興味を持つかもしれない志向の外にある企業」と出会う可能性を閉ざす懸念がありました。そこで、「こういう企業も見てみてはどうですか?」と本人が自覚する志向の範疇にない企業をあえて勧めることをときどき行い、学生の視野を広げる工夫もしています。

まさにこの「レコメンド」は「就活の作業を削減し、自分の未来に向き合う時間をつくってほしい」という志を結実したものでした。また大変うれしいことに、学生からの高い支持を得ることができました。

すると今度は、「学生の閲覧率が高い『レコメンド』の機能を活用して自社をPRしたい」、つまり「お金を払うからレコメンドリストに出してほしい」という新たな企業ニーズが生まれるに至りました。

“レコメンドの商品化”はしない

ただ、もしも「レコメンド」を商品化してしまえば、学生が「いずれたどりつくかも知れない選択肢」を先回りして提示する力より、「人を獲りたいという企業の願い」を届ける力が上回ってしまうリスクがあります。

利益獲得は企業の大切な使命の1つですが、他にもやり方はあります。レコメンドは、私たちが「学生にこうあってほしい」と強く願い、その思いを軸に何度も試行錯誤を繰り返した中でやっと実現できたもの。だからその思いを濁らせないためにも、「レコメンドは商品化しない」と決めているのです。

レコメンド機能の進化の過程では、失敗も経験しました。その一つが最初から個人にピタリと合う企業をレコメンドする方法です。

学生は、自分の選択軸や意向を自身でも確かめながら、たくさんの企業の情報に触れ、広め広めにプレエントリーを行います。これは、その後の応募へのつながりも含めた行動ログからもわかることなのですが、プレエントリーした企業の間でも、当然ながら志望度合いや選考への参加意向には幅があるのです。

仮に、学生がたくさんの企業にプレエントリーするプロセスが、学生自身を混乱させてしまっていたり、疲れさせてしまう原因になったりしているのであれば、その学生が最終的にプレエントリーしそうと思われる企業をピンポイントでレコメンドしたらどうか、と考えたのです。しかしこれは鮮やかなまでの空振り。まったくクリックされなかったのです。

今考えてみれば、それもそのはず。学生の多くは社会や企業を十分には知らない状態から就活を始めます。そして徐々に知識を広げていきます。なので最初から、「結果的にたどり着くだろう自身の“正解”」に近い選択肢を提示されても、腑に落ちなかったのでしょう。当然次の行動にも全く繋がりませんでした。

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