たくさんのデータを扱っていると、ついつい「私たちには見えている」という心境に陥りがちなのかも知れません。しかし、実際の人間の心情や行動のすべてを把握したり、予測したりができるわけではない。現時点で最高レベルと思える技術を駆使した「最適解」だけでは、人が動く「納得解」を上回ることはできません。
現在は、知っている企業から企業・業界への理解を広げ、徐々に知らなかった企業にも視野を広げられるようにレコメンドルートを構築しています。こうすることで納得感が高まるとともに、レコメンドの精度も高まり、最終的には入社したいと思える企業群にプレエントリーしてもらえるようになっています。
AIが自己PRを書く時代になるか
今、研究を進めているのは、「行動のレコメンド」。特に「迷っている人に対する行動の提示」です。就活しなきゃと思っているが、何からやればいいのかわからないし、気が進まない。そんな学生が、とりあえずリクナビにはアクセスするけれど、どのリンクも押さないといった行動が、よく見られました。
そこで、何もアクションがない状態が10秒ほど続くと、「お困りですか?」とポップアップが表示され、学生との対話をもとに、「あなたならまず自己分析からやるとよさそうですよ」「就活のスケジュールがわからないならこういうコンテンツを見てみてはどうですか」などと、次の行動を提案するような仕組みを考えています。
さらに先の課題として考えているのは、学生が自分の価値観や能力・よさを認識する際の補助となるツールとしてのAI活用です。現在、最重要課題に位置づけているのは、学生が十分に自己理解できていないことと、自己理解するきっかけとなる場や、その事前事後で起きた反省に対する支援体制が、まだまだ不十分な点です。
「卒業後の進路を決めた時期」について、国際比較した統計(リクルートワークス研究所「Global Career Survey」)によると、日本は「大学前期まで」が15%程度。ドイツの約7割、アメリカやベトナムの約6割などと比べると、圧倒的に遅い。もっと早い段階からの自己理解が進めば、「今後何を学ぶのか」「どんな仕事をするのか」について、より自律的に選択できるようになると思うのです。
AIとの対話型コミュニケーションを通して、AIが学生個人の能力や志向を示唆する形で可視化できたらどうでしょうか。究極には、AIが学生に代わって自己PRするようなところまで可能になってもいい、と考えています。
ただし、その自己PRをより深めていくのは、学生本人。AIは正確性や可視化を得意としますが、そこで導き出された情報を有効に活用できるかどうかは、本人の意志次第です。自分は一体どんな人なのか、今後どんなことがしたいのか。それを「見つけたい」という思いが強い人ほど、こうした新技術の恩恵を享受できるのだろうと思います。
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