現金NGが当たり前、激変する中国「決済実情」 なぜキャッシュレス化が急速に進むのか
「私はそうは(中国すごいとは)思わないですけどね。ちょっと行きすぎの感がありますよ。このままいけば、中国はどうなっちゃうんだろう? 私はかえって現金社会の日本のほうが、落ち着いていてうらやましいですけどね」
「えっ? 日本のことがうらやましいって? どういうこと?」。私は思わず聞き返した。今の自信満々の中国人で、まさかそんなことをいう人がいるのだろうか?とびっくりしたからだ。
真意はどういうことだろうか? 友人は続ける。
スマホが社会のインフラに
「中国はこれまであまりにも不便で、あらゆる面で遅れていたからこそ、ここまでスマホ決済が急速に発達した。既存のインフラがない、あるいはあっても不十分だったから、新しいサービスが普及する余地があって、その便利さにみんなが飛びついて爆発的にここまで広がったんです。つまり、中国の場合、スマホ自体が社会のインフラになったんですよ」
「スマホが社会のインフラになった?」
「そうです。だから、この国ではスマホを使わなければ生きていけない。スマホありきの前提で世の中が動いているから、70代、80代の老人だってスマホを使わなければならない。今、銀行が混んでいるのは年金の支給日くらいでしょ? スマホを使えない老人が行くだけで、ATMの前にもまったく人がいない。誰も財布を持たなくなった。スマホがなければ、タクシーにも乗れない。こりゃ、大変ですよ」
「40年前から社会のインフラが整っていた日本では、家の電話で連絡ができました。中国のように偽札が出回っていたわけでもなく、現金のやりとりで騙される危険性も低いから、スマホ決済する必要もない。キャッシュレス・エコノミーがこれだけ世の中で話題になっていても、日本にいるとその必要性をあまり感じない。なぜか? 日本社会は日本人が想像している以上に安心、安全。日本は社会と人とが信頼し合える相互信頼社会だからです」
「えっ?」
「今は中国のIT革命に目を奪われ、一部の日本人が『日本は完璧に後れを取ってしまった……』と心配している。中国人の中にも、日本が歩んできた経済発展の過程をよく知らないから、中には自分たちの国(中国)はさっさと日本なんか追い抜いたんだ、と思っている人もいます。そう思ってしまうのはある程度仕方がないかもしれない。中国は確かにある面は本当に一気に発展しましたから。でも、それは一面にすぎない。中国と日本の生活環境は根本的に大きく異なっている。その環境の違いを理解しないで、どっちが発展している、どっちが遅れている、と論ずるのはおかしい、と私は思っています」
私は目からウロコが落ちた。中国は不便だったからこそ逆に飛躍的にスマホというインフラが普及し、ある面で日本を飛び越えてしまった、という話に強く納得した。いわゆる「リープフロッグ(かえる飛び)現象」が起こったのだ。
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