現金NGが当たり前、激変する中国「決済実情」

なぜキャッシュレス化が急速に進むのか

そして、中国がかえる飛びをした要因ともいえるが、自分がこれまで中国に滞在していたときに感じた「不便な出来事」を思い出した。

たとえば私が以前、よくイラっとしたのは地下鉄の券売機だった。今ではプリペイドの交通カードが導入され、入金もスマホからチャージできるので問題ないが、数年前までは券売機に現金を入れて切符を買っていた(私の記憶では、北京では6~7年前まで、券売機の感度があまりにも悪いせいか、券売機の前に切符を手売りする駅員が立っていた)。

不便な地下鉄の券売機

北京や上海の地下鉄の券売機は、不思議なことに、コインだけ、紙幣だけ、両方とも使えるものの3種類ある。券売機の上の電光掲示板に「coin only」などと、ご丁寧に中国語と英語の表示まである。また、とても不思議なのだが、コインしか使えない券売機にも紙幣の投入口があるので、よく見ないで紙幣を入れるとすぐに戻ってきてしまう。また、感度も悪く、コインを入れたあと無反応だった場合は、40年前の日本のテレビのように、ドンドンと叩いてみたら直ったりした。

当時、すでに中国はかなり発展していたのに、なぜこんなにも不便なのか、私はいつも疑問に感じていた。北京の地下鉄のように古い券売機ならまだしも、今年5月に大連に行った際、2015年に開通したばかりの大連の地下鉄で券売機を使ったが、まったく同じ機械で1つも改良されていなかった。

日本では顧客が利用する設備や機械を随時リニューアルし、企業にとってコストをかけるのは当たり前だという認識がある。だが、中国では利益が先に立つため、まだそこまでの経費をかけようという動きは少ない。また、「お客様のため」という考え方も、そもそもあまり浸透していないのが実情だ。だから、技術力の問題とは関係なく、古い設備がいつまでも残ってしまう。また、使う中国人の側も「不便」だと思うのは海外生活を経験した人くらいで、一般の人は不便だともあまり感じていないし、「改善」を求める声もあまり湧き上がってこない。ずっとそうだったからだ。

中国の紙幣は1元、5元、10元、20元、50元、100元札があり、1元と1元以下には硬貨もある。これだけたくさんの種類のおカネがあるのに、券売機(飲み物などの自販機も含めて)で使える紙幣は5元札と10元札だけで、あまりにも少なすぎる。日本では150円の切符を買うのに1万円札を入れてもお釣りが出てくるが、中国では100元札が入れられる機械はなかった。だから、スマホから交通カードに入金できたり、スマホで4元や5元のジュースが買えるようになって飛躍的に便利になった(こんなに便利になって初めて、中国人もこれまでいかに不便な生活を強いられていたのか、痛感したはずだ)。

次ページシェア自転車が受け入れられた理由
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • ゴルフとおカネの切っても切れない関係
  • 日本野球の今そこにある危機
  • 意外と知らない「暮らしの水」ウソ?ホント?
トレンドライブラリーAD
人気の動画
面接や説明会で採用者が嫌う「9つのNG質問」
面接や説明会で採用者が嫌う「9つのNG質問」
海外マネー流入!外国人に買われた日本企業20社
海外マネー流入!外国人に買われた日本企業20社
優秀なはずの上司の下で部下が育たない根本理由
優秀なはずの上司の下で部下が育たない根本理由
男性も入れる?新業態『ワークマン女子』の中身
男性も入れる?新業態『ワークマン女子』の中身
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
生前贈与がダメになる<br>相続の新常識

相続をめぐる環境が激変しています。年110万円まで非課税だった生前贈与が税制改正により認められなくなる可能性も。本特集では相続の基本から、よくあるトラブルと解消法、最新路線価に基づく相続税額、さらに生前贈与の将来動向まで取り上げました。

東洋経済education×ICT