「生産性向上を現場に丸投げ」する会社の末路 それでは、電気は消えても仕事は消えない

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顧客の細かいロングテール化したニーズにすべて応えていくことが、本当に採算が取れることなのかどうかを、しっかりと試算してみましょう。前述でご紹介したデータのとおり、「日本は顧客が求めるサービスレベルが高すぎる」「結局顧客の言いなりにならないと商売は成り立たない」というのは現時点ではそのとおりですが、あきらめの姿勢を続けた先に待っているのは、ブラック企業化ではないでしょうか。

この問題を現場レベルで個別交渉させるのは酷な話です。組織としてのスタンスを明確にしなければならないときが来ています。

昼夜を問わない激務が当たり前のイメージで、精神的にも肉体的にもタフネスを売りにしているコンサルティング業界の中でも、組織全体として生産性向上に取り組み成果を上げつつある企業も出てきています。コンサルタントのプロジェクトではクライアント企業にプロジェクトルームを作ってもらって常駐という形態で仕事をすることも多いのですが、定時で帰ろうとするとクライアントメンバーの目がそれを許さない雰囲気があります。

そんな中、ある大手コンサルティング会社では、改革に経営層も深くコミットし、「改革を始めた頃はクライアントになかなかご理解いただけないこともあったが、それで仕事がなくなるのであれば、そういうお客様とは付き合ってはいけないのだと覚悟もした」と社長がインタビューなどで語っています。

実際に私もコンサルタントとして仕事をしてきましたが、長時間労働や無理な要求を押し付けてくるクライアントとのプロジェクトは信頼関係が築きにくく、メンバーの健康を損ねたり、終わって収支を見ると赤字になったりとあまりよいビジネスとは言いがたく、短期的に売り上げは上がるものの、中長期的に利益につながるのかは疑問です。

実際に全員定時退社などを果たしている企業のお話を伺うと、自社のサービス価値を顧客に理解していただくのはもちろん、働き方も理解してもらえるよう努力した、ということをおっしゃる経営者の方が少なからずいます。

個人と組織の両面で生産性を問う

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働き方改革には賛否両論ありますが、確実に言えることは政府が推進している今は潮目が変わったタイミングです。このタイミングを生かして会社としてどんな事業や顧客サービスを提供していくのかというスタンスを明確に打ち出し、顧客の理解を求めていくことが現場の葛藤を解消し、企業としての生産性向上につながります。

安易な解決策として、残業規制だけを設けたり、プレミアムフライデーのような一律のノー残業デーを決めたり、業務の見直しなきままテレワーク導入などの施策が働き方改革プロジェクトの目玉になってしまっては、成果は大山鳴動して鼠一匹ということにもなりかねません。

安易に画一的な施策導入にとどまらず、個人と組織の両面で生産性を問うことが本質的な働き方改革として、成果につながっていきます。働き方改革に関与することになった方々はぜひ、勇気と覚悟を持って、組織の生産性向上を俎上に載せていただきたいと願います。

清水 久三子 アンド・クリエイト代表取締役社長・人材育成コンサルタント

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しみず くみこ / Kumiko Shimizu

アンド・クリエイト代表取締役社長・人材育成コンサルタント
大手アパレル企業を経て1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社。企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして新規事業戦略立案・展開プロジェクトをリード。「人が変わらなければ変革は成し遂げられない」との思いから専門領域を人材育成分野に移し人事・人材育成の戦略策定・制度設計・導入支援などのプロジェクトをリード。コンサルティングサービス&SI事業の人材開発部門リーダーとして5000人のコンサルタント・SEを対象とした人材ビジョン策定、育成プログラム企画・開発・展開を担いベストプラクティスとして多くのメディアに取り上げられた

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