光明が差した?米朝の軍事衝突を避ける道 朝鮮半島非核化に向けた役割分担とは?

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今回の制裁措置は、特に中国という「国」に向けられたものではない。そのことはムニューシン財務長官も名言している。すでに中国政府は、巨大銀行を含めた個別銀行に対して、北朝鮮との取引を停止するよう通達を出している。それについて、トランプ大統領も「習近平国家主席の思い切った措置に感謝する」と評価している。

今回のトランプ大統領の大統領令は9月21日に出された。その当日、日米韓3カ国首脳会談の場でトランプ大統領は「米国とビジネスをするか、北朝鮮の無法な体制の貿易を手助けするか、各国の銀行はその選択に直面することになる」と述べた。

今後、各国の銀行が北朝鮮に資金協力をすれば、米財務省がその銀行を、米国の金融システムから排除できる。そういう事実上の道をつけたことになる。この米国の金融制裁強化については、日本を含む世界各国が強く支持している。中国政府は、結果的に粛々と協力していく構えである。

北朝鮮包囲網に向けたそれぞれの役割分担

いま一度、前後関係を整理しておこう。トランプ大統領の国連演説は18日だった。金融制裁強化の大統領令に署名したのは21日。ロシアのラブロフ外相が、欧州の中立的な国々による仲介役の可能性を示唆した記者会見が行われたのは22日だった。

この世界中の各国連携プレーが功を奏するかどうか。これからの各国の出方次第だが、それぞれの役割分担によって、米朝軍事衝突が避けられそうな、かすかな光明が差してきたことは確かだ。

米朝首脳の言葉のやり取りは過激であり、テレビの情報番組にとっては、かっこうのテーマといえるだろう。しかし、今はいたずらにあおるべきではない。ここはひとつ米メディアを含めて、世界のメディアには冷静であってほしい。

湯浅 卓 米国弁護士

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ゆあさ たかし / Takashi Yuasa

米国弁護士(ニューヨーク州、ワシントンD.C.)の資格を持つ。東大法学部卒業後、UCLA、コロンビア、ハーバードの各ロースクールに学ぶ。ロックフェラーセンターの三菱地所への売却案件(1989年)では、ロックフェラーグループのアドバイザーの中軸として活躍した。映画評論家、学術分野での寄付普及などでも活躍。桃山学院大学客員教授。

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