定年して「暴走老人」にならないための5原則 年を取ったらおカネよりも大事なことがある

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老年精神医学を専門とする精神科医の和田秀樹氏によれば、この現象は加齢による人間の感情の変化を考えると、ごく自然なことなのだそうです。年齢と共に脳の中でもまず先に前頭葉の機能が低下することが多いと言います。前頭葉が委縮していくと、感情抑制機能の低下や性格の先鋭化といった傾向が強く出てきます。齢を取ると涙もろくなると言いますが、これは感情抑制機能が低下していることの現れでしょう。性格の先鋭化というのは、それまである程度理性で抑えることができていた、その人の性格の特徴が大きく表に出てくるということです。

ところが、こうした前頭葉の機能低下というのは別に最近起きたことではなく、生物学的に起きる現象ですから、昔からあったはずです。にもかかわらず、最近になって「キレやすい老人」が増えてきている、そしてそれが犯罪にまでつながっているというのはいったいどういうわけでしょうか。理由は一つではないでしょうが、私が考えるのはやはり独り暮らしであったり、家族がいてもうまくコミュニケーションがとれなかったりする、「孤独」な人が増えてきているというのが、一番大きな原因なのではないかと思います。

昔は多くの人が大家族で暮らしていました。私が子どもの頃は、おばあちゃんがご飯を作ったり、おじいちゃんが孫の面倒を見たりといったことが大家族の中では日常的に行われていたのです。人間は極めて社会的な動物ですから、家族という小さな単位の社会であっても、他の人と共に暮らしていくことでわきまえるべきところや我慢すべきところは、多かれ少なかれ出てきます。

そうしたコミュニケーションによる力が前頭葉の萎縮やそれに伴う感情の激化をある程度防いでいたと言っていいでしょう。ところが核家族化がこの大家族での暮らしをほとんど消滅させてしまいました。皮肉なことに現在65~70歳以上の多くが、田舎から大家族での暮らしを捨てて都会に出てきた人たちです。大都市での地域のつながりも希薄なままに定年を迎えて、孤独な状況に陥ってしまっている人が多くなっているのでしょう。

勤務先以外に知人や友人を必ず持つ

今さら昔の大家族制に戻るということは不可能ですが、それでも極端な孤独に陥らないようにする方法はあります。サラリーマン現役時代からできるだけ会社の人間とだけ付き合うのではなく、会社の外に多くの知人や友人を持つことです。単純なアドバイスのようですが、自然にできない人も意外に多く、意識してやらないといけません。

脳は毎日同じパターンの行動を繰り返していると、劣化していくと言われていますから、会社の中でルーティンの仕事をし、同じ人たちと付き合うだけでなく、できるだけ幅広く新しい人と知り合うことを通じて新しい行動に取り組んでいくことが大切です。これによっていま勤めている会社という居場所がなくなったとしても、新たな自分の居場所を持つことができると同時につねに人とのコミュニケーションを保つことができるようになるでしょう。結果として、脳の活性化も維持することができるようになるはずです。

私が考える老後に向けた「新しい友人を作るための5ヶ条」は以下の通りです。

1.50代になったらなるべく会社の人間とはつきあわない
  ⇒アフターファイブや休日は会社の付き合いと距離を置く

2.昔の友達(小中高時代)との交流の復活
  ⇒SNSとかで比較的簡単にできる

3.新たな趣味にチャレンジする
  ⇒趣味を通じたつながりが増える

4.できるだけ人の世話をする
  ⇒人の役に立つことで、つながりは非常に強くなる

5.好奇心を持ち続ける
  ⇒何事にも興味を持てば人とのつながりも増える

私は会社を定年で辞めて5年経ちますが、元勤めていた会社の人たちとの付き合いは、ごくわずかです。この5年間の間に知り合って付き合うようになった人たちのほうが圧倒的に多くなってきています。定年は人生の一つの区切りにしかすぎません。自分にとって新しい友人等でつながりを拡大していくことが、暴走老人にならないための方法と言えるのではないでしょうか。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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