列車内「乗客ウォッチング」はアイデアの宝庫 「鉄道小説」の巧者が明かす創作の秘密
――いきなりですが、「D列車でいこう」に出てくる鉄道会社のモデルは錦川鉄道ですか。
そうです。路線距離や駅の数は錦川鉄道をモデルにしています。でも、さすがですね。なぜわかったのですか。
――作中では広島県の鉄道会社となっていましたが、広島県には該当しそうな鉄道会社がなく、隣の山口県の錦川鉄道なら赤字額や路線距離が近いかなと。では、なぜ錦川鉄道をモデルにしたのですか。
僕は鉄道にそれほど詳しくないので、非現実的な物語にならないように全国にある鉄道会社の数字をいろいろ調べ、物語で使えそうな鉄道会社を探したんです。
自腹で運転士養成、いすみ鉄道で実現
――訓練費の自己負担を条件に運転士を養成するというアイデアは、その後実際にいすみ鉄道が実行しましたね。
そうですね。フィクションで書いたことが現実の世の中で起きるというのは、ちょっと痛快ですよね。同社の鳥塚亮社長にはお目にかかったことがあります。「D列車」を読んだとはおっしゃいませんでしたが、大の鉄道ファンですからきっと読んでいるに違いないと僕は思っています。
――列車の中に子供たちの絵をたくさん貼ったら、両親や親戚が切符を買って見に来るというアイデアも卓越していますね。これも参考事例があったのですか。
特にありません。駅に子供たちの絵が飾ってあるというのは普通にあります。それを駅ではなく電車の中に飾れば、切符を買わないと見られないというアイデアは自然に思いつきました。絵を描いた人自身がお客さんを連れてくるというビジネスモデルは貸し画廊でもやっています。その応用です。
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