列車内「乗客ウォッチング」はアイデアの宝庫 「鉄道小説」の巧者が明かす創作の秘密

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――タイトルはどうやって決めたのですか。

もともと「ドリームトレイン」というタイトルでした。でも徳間書店がこの本を出す月に、宮部みゆきさんの「ドリームバスター」が出ることになり、「紛らわしい」ということで「D列車で行こう」になりました。

――「終電の神様」は短編集ですが、すべての短編がつながっているような、つながっていないようなという構成がユニークです。意識的に行ったのですか?

ちゃんとしたプランがないまま3年がかりで書いた話です。1冊にまとめるにあたって、すべての短編の辻褄を合わせようかとも考えたのですが、逆に辻褄を合わせることで書きたいことが書けなくなる部分もある。それなら辻褄を合わせず、1話ごとの内容を豊かにしたほうがいいかなと。

「終電の神様」モデルは京急?

――阿川さんも終電が止まってイライラしたという経験がありますか。

もちろんです。最近は鉄道会社同士の相互乗り入れでトラブルの影響を受ける範囲が広くなり、昔よりも頻繁に電車が止まっていますよね。相互乗り入れで便利になった“コスト”として、みんなのイライラが増えているのだと思います。

『終電の神様』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

ただ、自分の置かれた状況によって感じ方は変わる。電車が遅れて、予定の場所に間に合わずイライラすることもあれば、とくに予定がないときは「まあ、よくあることだし」と意外に冷静に受け止めることもある。一人の人間でもこれだけ違うのだから、満員の列車内では、人によっていろいろな感じ方をしているのだろうと思います。

普段から電車に乗っているときは、隣にいる人や向かい側にいる人に対して、「この人は何歳で、どういう家庭にいて、どういう仕事をして、なぜこの電車に乗っているのだろう」「今日は彼、または彼女にとってどういう日だったのだろう」と、想像しています。小説家の性(さが)かもしれませんが。

――「終電の神様」に登場する電車のモデルは京急ですか?

イメージとしてはそうです。7つの物語のうち4つは京急沿線の黄金町に着想を得たものですから。でも、京急と決めつけると辻褄が合わなくなる点がいっぱいありますよ。そもそもほかの鉄道会社と比べ、京急はそんなに止まりませんから(笑)。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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