メルカリの全米制覇が「夢物語でもない」理由 初直撃!フェイスブック出身幹部が抱く野望

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――現地版アプリの投入からは3年が経ちました。今、米国におけるメルカリのサービスはどういう段階にあるのでしょう?

メルカリの創業者で会長兼CEOの山田進太郎氏(39歳、9月19日時点)。今年4月に社長職を譲り、自身は海外事業の開拓に専念している(撮影:今井 康一)

メルカリをひとつの機械に例えると、日本生まれの機械だが、アメリカという環境の中で、アメリカの電源につなげてもちゃんと電圧が合って動くということはわかったという段階。競合の関係上、あまり具体的な数字を出したくないが、少なくとも現地で機能することは証明できている。

ただ、サービスの認知度はまだ高くなく、これからもっとマス向けにアピールしていかなければならない。幸い日本ではすでにしっかり利益を出せていて、アメリカでどんな動きを取るかも計画しやすい。だから9月からはアメリカのCEOとして、いっそうこれを加速していきたい。

採用やプロダクト作りも、今かなり現地化を進めている。6月にはアプリそのもののコードのベースを日本と分けた新アプリを出した。ベースが同じままだと、大きな変更をする際、日米両方でその影響に対応しなければならないため、スピードが落ちる。今回の刷新で本当にアメリカ向きの機能を即時に判断、追求できる土台ができた。

アメリカでは人と人とのやり取りが減っている

――サービスをマスにアピールしていくにあたり、今、米国の消費市場、消費者心理などの傾向をどう分析していますか。

今、アメリカの消費者は、けっこう「大企業疲れ」しているように見える。何でもアマゾンで買う、何でもウォルマートで買う……という傾向が強くなって、個人経営の小さな商店が閉め出され、結果として、人と人とのやり取りがどんどん少なくなっている。政治に目を向けても、わざと皆をバラバラにするような方向に走っている感がある。

だからこそ人と人を結び付けるサービスが求められているはずだし、メルカリはそれを提供できる。人の命を救えるようなサービスではないけど、今、アメリカで必要とされていることの一部を担える。そういう意味では今、社会的に非常にタイムリーなサービスだ。

メルカリの特徴は単なる売買ではなく、「捨てるかどうか」迷っていたものを誰かの生活に役立てられてよかった、しかもある程度のおカネが手に入ったから寄付よりはよかった、というもの。そういう自己肯定感とか、満足感、温かい気持ちが生まれるプラットフォームであるということを、きちんとストーリーとして仕立ててアメリカの消費者に伝えていきたい。

僕自身、メルカリでいろんなモノをいろんな人から買っているが、みんな包み方が違うし、メッセージを残す人もいてとても面白い。他方で、絶対に売れないと思って出したモノが売れたり、絶対に売られていないと思っていたモノを買えたり、そういう体験もできる。実際、メルカリを使っている人からは「コネクションを感じた」というコメントがよく聞かれる。

日本ではすでに「メルカリってそういうものだよね」との認識が広がっているが、アメリカではまだまだ。この要素をどう伝えるかが、今後のめちゃくちゃ重要なミッションだ。どこかのタイミングで、「アマゾンで買うのと違うよ」と、独自の立ち位置を打ち出すPRを、もっと分厚い形で展開していこうと思っている。

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