メルカリの全米制覇が「夢物語でもない」理由 初直撃!フェイスブック出身幹部が抱く野望

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――これからマーケティングを強化していくということですが、その時にグーグル、フェイスブックに在籍していたときの経験はどう生きてきますか?

人脈の部分が大きい。日本のビジネスにおいては人脈の重要性がよく語られるが、実はシリコンバレーも人脈が大事。グーグル、フェイスブック時代にいろいろな人とかかわって、ビジネスをちょっと手伝ったり、助けたりする場面も多かった。だから逆に今は、いろんなところで「助けてね」「手伝ってね」と、遠慮なく言っている。たとえば、新しいコンセプトの広告をトライアル的に展開したいとき、あるいは現地で優秀な人を採りたいとき、人脈は役に立つだろう。

今はメルカリの成功に向けて、今まで作ってきた信頼関係を遠慮せず頼ろうと思えるほど、メルカリという会社に自信を持っている。何も恥はない。かなり手前みそな感じだけど、でも、本当に宣伝というつもりはなく、信じて言っている。

目立った競合はまだいない

――米国現地での競争環境はどう見ていますか。

サービスの開始からおよそ4年でアプリダウンロードは7500万(国内5000万、米国2500万)に到達。不適切出品も話題に上ることが多くなった中、どこまで成長を続けられるか(写真は六本木ヒルズの本社、撮影:今井康一)

似ているサービスはあるが、完璧に同じものはない。まず、取引のためにオフラインで会わなければならないサービス。これは安全性の問題が出てくるのと、ビジネスとして、販売手数料を取る以外の課金ポイントを作らなければならない。一方、メルカリと同じように配送という形でやっているPoshmark(ポッシュマーク)みたいなサービスもあるが、洋服、ブランド品などの狭い商品群しか扱っていない。

あるいは、先ほど触れたイーベイはすでに広く使われているが、もともとウェブサービスなのでモバイルには強くない。そういう意味では、メルカリはすでにユニークな価値を有しているし、大きな市場を取れる可能性を秘めているだろう。

――米国で「ここまで来たら成功」といえる基準は持っていますか?

今の段階で定義すべきではないが、まずは一般的に手段として知られていて、「こんなときに使いたいものだよね」と、ほとんどの人に理解される状態を目指している。ニッチではなく、マス向けのものになるというのは一つの目標だ。

――物流面など、米国には日本とは異なる条件、困難さもあります。

確かに米国現地でメルカリが始まって初期の頃は、売りに出されているモノが少ないので、すべての州をまたいで売り買いできることが求められていた。でも今は、州単位で見ても供給が十分になってきている。

すると今後は、価格に関係なく早く届くモノを買いたい人、州をまたいで届くのが遅くても価格が安いモノを買いたい人、というふうに日本より顕著にニーズが分かれてくる。そこはAI(人工知能)を使いながら、もうちょっと高度なパーソナライズの機能を検討していきたい。

今後はアメリカのCEOとして、プロダクト開発はもちろん、マーケティングや人事・採用も、経営のすべての面により深くコミットしていく。肩書にはこだわっていないが、ここまで山田がエンパワー(権限委譲)してくれているというのは非常に価値があること。もちろんその分、責任も重くなるだろうけどね。

『週刊東洋経済』9月19日発売号(9月23日号)の特集は、「メルカリ&ZOZOTOWN 流通新大陸の覇者」です。 
長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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