中国の大型書店「方所」が注目を集める理由 知識欲がビジネスチャンスになっている
――まず毛さんの経歴を教えてください。
毛継鴻(以下、毛):子ども時代は読書をするほうではなかったが、父が退役後に新華書店で働いていたこともあって、当時の一般的な家庭としては家に本が多かった。北京のファッション関係の大学を卒業した後、一旗揚げようと当時最も経済が発展していた広州に向かった。
やっと見つけた広告デザインの仕事は月給600元(1元は約16円)。そのほとんどをつぎ込んで、市内でいちばん勢いがあった五羊新城というエリアに部屋を借りた。そういう場所に住んでると、人が僕を見る目も違ってくるんだ。後にファッションブランドを立ち上げたのも、方所を設立したのも広州。夢をかなえてくれた街だ。
――中国ではネット書店における書籍の割引販売が著しい。ファッションデザイナーとして成功を収めた後、儲からないとされる書店事業に参入した理由は?
毛:経済発展と同時に、各都市の均一化が進んだ。ファストフード、ファストファッションブランド一辺倒になると、ある時点で人々は自分の存在感の希薄さに気づく。生きる意味や、個性を探りたい欲求が強まる。それは都市も同じことで、個性ある人間、文化的な街づくりには共通したものがある。読書や人とかかわることで知識をどんどん仕入れて、自分の素質を高めていくことが欠かせない。
勉強のためという目的ありきの読み方になりがち
毛:この国では高校、大学までの読書量は決して少なくないが、勉強のためという目的ありきの読み方になりがちだ。就職してからは読書量ゼロの人も多い。やがて子どもができて「パパ、空の終わりはどこ?」「なんで人は死ぬの?」なんて聞かれて、困るわけだね(笑)。
子どもが発する質問は内発的で、知りたいという純粋な欲求に基づいている。僕も娘を持って初めて、これこそが知識や本に対するあるべき態度だと気づいた。子どもたちに誘発される形で自分がこれまで読まなかった分野の本を読むようになり、子どもが親を牽引する読書環境を整えてみよう、という考えに行き着いた。これが今の方所だ。
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