前川喜平「教師に強制される仕事」にモノ申す 前文科事務次官が訴える理想的な学校の姿

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――文科省は教員以外の力を活用するという発想を持っているのですか。

基本的な方向性としては持っていて、「チーム学校」という言葉で表している。スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、特別支援教育の支援員、バイリンガルの指導員、学校司書、ICT(情報通信技術)専門員など、さまざまな専門性を持った人たちが有機的に結びつき、協力しあって、チームとしての総合力を高めていく形態を考えている。

そういう人たちをきちんと学校の中に位置づけて、その仕事で生活が成り立つようにしてあげないといけないが、そこがお寒い状態になっている。スクールカウンセラーはものすごく重要な仕事になっているのに、ほとんどが非常勤だ。学校司書も小学校、中学校はそうだ。

「チーム学校」と言いながら、そのチームを構成する専門性を持ったスタッフが、非常に不安定な身分、要するに非正規公務員のままになっている。そこに非常に問題がある。こうした新しい職種を「基幹的職員」と位置づけて、標準法(公立小・中学校の学級編成と教職員定数の標準について必要な事項を定めるもの)で配置する人数を計算し、その人数は必ず義務教育費国庫負担制度(教職員定数に基づいて算定された教職員給与の3分の1を国が負担する制度)の対象にするところまでできるといいのだが……。

人件費は削れば良いというものではない

――やはりおカネの問題がネックですか?

そう。財務省は反対するだろう。配置する公務員が増えるわけだから、「そんなのとんでもない」「公務員を減らすのが行政改革だろう。公務員を減らそうとしているのに増やすような対策では困る」と。

でもそういう教員および教員以外のスタッフは不可欠なものであって、その人たちが安定した生活を送れないと学校の機能は果たせないと思う。学校にとって人件費は削れば削るほどいいという経費ではない。教育を充実させるためには、「やっぱり人件費は増やさないとダメ」と言いたい。

実際、これは実現できる。幸か不幸か子どもの数は減っていく。義務教育の人件費もそれに合わせて減るが、今の絶対額を維持してもらえれば、浮いた分で教員の定数を増やしたり教員以外のスタッフを常勤化したりできる。10~20年といった長い目で見れば、理想的な学校に近づけられると思う。

『週刊東洋経済』9月11日発売号(9月16日号)の特集は「学校が壊れる 学校は完全なブラック職場だ」です。 
中島 順一郎 東洋経済 記者

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なかしま じゅんいちろう / Junichiro Nakashima

1981年鹿児島県生まれ。2005年、早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、東洋経済新報社入社。ガラス・セメント、エレクトロニクス、放送などの業界を担当。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などを経て、2020年10月より『東洋経済オンライン』編集部に所属

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