前川喜平「教師に強制される仕事」にモノ申す 前文科事務次官が訴える理想的な学校の姿

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――学校職員としてではなく、外部指導者ではダメなのですか?

今の外部指導者には謝金を出して技術指導だけ委嘱している。学校としての責任は負えないので対外試合の引率をしたり合宿に連れていったりできない。中体連や高体連も「教員でないとダメだ」と言う。でも校長の指揮監督下に入れば、教員でなくても引率などが可能になる。

前川喜平(まえかわ きへい)/1955年生まれ。東京大学法学部卒業後、旧文部省入省。初等中等教育局長などを経て2016年事務次官。17年1月、天下り斡旋問題で辞任(撮影:尾形文繁)

これをアスリートのセカンドキャリアとして位置づけたらいい。力のある人が指導者としてキャリアを広げる。スポーツには学校スポーツと商業ベースの民間スポーツ、社会スポーツがあるが、3つの領域にまたがる形で指導者という職業を確立できないか。部活動だけではフルタイムの仕事にならない。午前中は高齢者への指導、午後は部活動の指導、夜はサラリーマンのレクリエーションの指導というように組み合わせてフルタイムにする。実はそういう会社を作ろうかと思っている。半分以上冗談だが、ニーズはあると思う。

文部科学省はスポーツ庁という役所も抱えている。国民がもっとスポーツに親しむことが大事だと言っているわけで、そのためにはやっぱり指導者が必要だ。スポーツの厚みを増していくためには、やはりアスリートのセカンドキャリアを考えないといけない。

私の5年後輩で、今の初等中等教育局長である髙橋(道和)くんは、その前のポストがスポーツ庁の次長だった。スポーツの世界も学校の世界もわかっているのだから、大改革をやったらいい。「教員の働き方改革」というときに部活動の合理化は避けて通れない。

給食指導は地域の力を使え!

――部活動以外でも負担を減らせるところはありますか?

もう一つ合理化したいと思っているのは、給食指導だ。学校給食はただのランチではなく、教育課程の中に位置づけられた特別活動ということになっている。仕事として与えられてしまっているので、子どもたちと一緒に給食を食べないといけない。先生は休憩の時間がなく、ものすごくかわいそうだ。

休憩がとれるようにするには、たとえば「食育指導員」といった肩書を地域のおじいちゃん、おばあちゃんに与えて、学校に入ってきてもらう。11時に集合して今日の献立や入っている栄養素、産地など、子どもたちに伝えるべきことを栄養教諭や学校栄養職員から予習する。そのうえで給食を一緒に食べながら食育してもらう。無料で給食を食べられるのが報酬だ。

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