とはいえ、いきなり30km走を行うと故障のリスクが高くなるため、夏合宿の初期には、クロカン走(起伏のある芝生などを走る)などでじっくりと「脚づくり」をする大学が多い。それから、20~40kmなどの距離走を中心としたメニューで走り込み、夏合宿の終盤にはスピード練習を取り入れた実践的なトレーニングで締めくくる。同じ夏合宿でもその内容を3段階にして、秋の駅伝シーズンに備えているのだ。
夏合宿は「走り込み」の時期になるため、走行距離も自然と増える。多い選手は月間走行距離が1200km近くに到達。1日平均40kmという距離を走ることになる。
ただ40kmを走るだけなら、朝練習で15km、本練習で25kmをジョグすればいいわけで、箱根を目指す学生ランナーにとってそれほどつらいものではない。だが、実際は30km走ならキロ3分30秒ペースが基本で、それよりも速いタイムで走ることもある。漠然と走るのではなく、設定されたペースで走ることがトレーニングの肝で、タイムを意識しながらの練習が厳しいのだ。
約2カ月の夏合宿を終えると、大きく変貌を遂げる選手がいる。今年、正月の箱根駅伝で4位に大躍進した帝京大学を指揮する中野孝行監督も夏合宿の成果をこう語る。
「ウチには高校時代に実績のない選手が多いこともあり、選手たちはスポンジが水を吸収するようにトレーニングをすればするほどパワーアップしていきます。その結果、ボーナスポイントを使えるようになる。秋に飛躍する選手がいれば、来年以降に急激な伸びを見せる選手もいます。その時期は選手によって違いますね。ただ、夏は力をため込んでいく時期。中には高いレベルまで一気に駆け上がる選手もいます」
学生ランナーにとって、夏の2カ月間は非常に意味のある時間なのだ。
夏合宿は「チーム力」も高める時期
個々の力を急激に伸ばす夏合宿は「チーム力」を養うにも最適な時期だ。正月の箱根駅伝で、予選会ギリギリ通過から一気にシード権を獲得した法政大学の坪田智夫駅伝監督も、昨年の夏合宿の過ごし方が大きかったと振り返る。
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