箱根駅伝を目指す選手たちの“夏”とは? 大一番で活躍するための、自分の作り方

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「私が指導するようになって、チームは2年連続で箱根駅伝の予選会を落選しました。その2年は、夏合宿に入ったとたんに質の高い練習をやらせてしまい、10月の予選会にピークを合わせることができなかったのです。そこで実業団時代の先輩である東洋大学・酒井俊幸監督に無理を言って、東洋大の合宿に参加させてもらいました。

酒井さんは、かなり余裕のあるスケジュールを組んでいて、『夏はトータルで考えなきゃダメだよ』というアドバイスをいただきました。夏合宿は段階を踏んで上げていくことを学ばせていただき、昨年はそれがいい流れになって、予選会の突破につながったのです。いま思えば、過去2年間は予選会のスタートラインに立ったときに夏の疲労が出ていたのかもしれません。いい練習がやれていたので、トレーニングに指導者の欲が出てしまいました」

選手も指導者もいい練習を求めるあまりに、本番に合わせるという意識を見失ってしまうことがある。どうやって本番にピークを合わせるべきなのか。普段から冷静な目で、先を見つめることも大切なのだ。

少数精鋭での選抜合宿に力を注ぐ大学が大半だが、箱根駅伝4連覇を誇るなど名将と知られる駒澤大学・大八木弘明監督の「夏合宿論」はなかなか興味深い。駒大は19年にわたり、8月に長野県で約3週間の全員合宿を行っているからだ。

「夏合宿は駅伝のためのスタミナづくりと、チーム力・結束力を高めるためのものです。駅伝はトラック種目と違って、チームで戦います。年に1回は部員全員での合宿を組んで、チームを駅伝シーズンに向けてひとつにするのが目的です。駅伝は走る選手だけではなく、サポートする人たちの力も必要ですから。

優勝するような年は、全員合宿が終わってからの雰囲気が変わりますし、チームもレベルアップしています。そこからまたやる気がいっそう湧いてくる感じがしますね。強くなるための雰囲気づくりは必要だと思います」(大八木監督)。

学生ランナーたちがどんな夏を過ごしているのか、少しは理解していただけたと思う。ビジネスシーンでも、「目標のプロジェクトへのピーキング」「社内の競争意識」「成果を上げる部署になるための雰囲気づくり」など、学生ランナーたちの“夏合宿”から学んでいただければ幸いだ。
 

酒井 政人 スポーツライター

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さかい まさと / Masato Sakai

東農大1年時に箱根駅伝10区出場。現在はスポーツライターとして陸上競技・ランニングを中心に執筆中。有限責任事業組合ゴールデンシューズの代表、ランニングクラブ〈Love Run Girls〉のGMも務めている。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』 (oneテーマ21) がある。

 

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