最初に、下側の女性のグラフを見ていただきたいのですが、女性は年収が高くなればなるほど結婚に対して後ろ向きになっていることがわかります。1000万円以上の収入がある未婚女性は6割が結婚に後ろ向きで、前向きな人は20%程度しかいません。
以前、「女性が直面する『稼ぐほど結婚できない』現実」という記事でも紹介しましたが、高収入の女性ほど結婚する意思がなくなる傾向が、ここでも見られます。
一方、男性のほうはどうでしょう? こちらでは、低収入層での結婚意思の低さが顕著です。男性の場合、結婚に踏み切るためには「年収300万円の壁がある」と言われていますが、この調査では年収400万〜600万の層で結婚意思が最も高くなっています。結婚と収入に切っても切れない関係があるのは間違いなく、低収入男性と高収入女性の未婚率が高いのは、そもそも彼らの結婚意思自体が低いからだ、ということがわかります。
年収によらず、一定数「結婚しない」人はいる
ただ、ここで注目したいのは、すべての年収を通じて、男女とも20%程度の一定割合が「結婚しない」と回答していることです。結婚に後ろ向きな層もまた、最低でも男女とも4割は存在しています。年代別では年齢上昇に反比例して、男女とも結婚意欲は減少しましたが、年収軸で見ると、年収の多寡に関係なく、どの年収でも一定数結婚に後ろ向き層が存在するということになります。
こうしてみると、出生動向調査の一部の結果だけを取り出して、「9割の男女が結婚したい」という物言いは正確性を欠くと言えるでしょう。それどころか「男女とも最低2割は結婚しないと決めている」層が存在し、「男女とも最低4割は年齢や収入に関係なく結婚には後ろ向き」だと言えるのです。
9割も結婚したがっているという論を前提にするから、未婚者は「結婚できない人」扱いされてしまうのです。やがて、「結婚意欲があるくせにできないのは、本人が努力を怠っているからだ、または、何かしら欠陥があるからだ」という決め付けにもつながります。結婚しているか否かで人間の価値は決まりません。結婚できた人は能力が高く、結婚できなかった人は能力が足りないという話では必ずしもないのです。結婚したくない人もいるし、結婚する必要性を感じない人もいることでしょう。
ちなみに、1980年代までがなぜ皆婚社会だったかというと、それは、本人たちの意欲や意思とは別次元で、お見合いや職場縁など社会的なマッチングシステムが機能していたからです。意欲は大事ですが、結婚とは個人の意欲だけでできるものではないのです。
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