米国は「高齢者視点」で住みやすい国なのか 高齢者の「生きやすさ」を測る新たな指標

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この指標は今後の見通しも考慮に入れている。その理由の一つは、欧州諸国が今後さらに高齢化曲線に沿って進んでいくことになるからだ、とロウ教授は述べている。

「第2次世界大戦の後、米国にはベビーブームがあったが、欧州の旧西側諸国では出生率が激変した。つまり多くの国がこの戦争からの回復に取り組んでいる間に、経済力が弱体化したために、出産率が激しく低下したのだ」と同教授は話す。結果、欧州は米国に先んじて高齢化したのである。

米国勢調査局は、2050年までの30年間で、米国の65歳以上の人口は4800万人から8800万人にまで膨らむと見込んでいる。世界を見渡しても、高齢人口は2050年までに16億人となり、倍増する見通しだ。こうした中、米国の平均年齢は、他国より若干若くなりそうだ。一方、国勢調査局によると、2050年に人口における高齢者の割合が世界的に高い国々は、日本、韓国、香港、台湾などである。

米国の高齢者の経済安定性は?

経済的安定における米国の成績は芳しくなく、このカテゴリーにおいて、30カ国中、19位となっている。このカテゴリーでは、65歳以上の人口を対象に、特定の所得額より収入が低い高齢者の割合、つまり「貧困リスク」と呼ばれる率直な尺度を用いて順位を決定している。

たとえば、ある国の平均年収が4万ドルの場合、2万ドルしかない高齢者は貧困リスクが高いと考えられる。また、経済的安定カテゴリーでは、必要な食品を購入できる高齢者の割合も測っている。上位を収めたのは、ルクセンブルク、オランダ、スペインだった。

米国は福祉の分野においては16位につけている。これは、長寿の視点からばかりか、健康的な生活という視点からも、重要なカテゴリーである。このカテゴリーでは、65歳以上の人が障害がなく生活できる平均年齢で評価している。

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