競馬の調教師、「調教」以外も仕事は山盛りだ 競走馬と向き合い、休みのない日々の生活

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そして、調教師は火曜日も月曜日と同様に過ごすことが多いという。この間に管理馬の出走レースを決めたり、調整メニューを考えたり、出走させる馬の騎乗者を手配したりと、やらなければならないことはたくさんある。馬の状態を把握し、いい状態でレースに送り出すこと。故障につながるような異常を早めに発見して未然に防ぐこと。難しいことを当たり前にこなさなければならないのだ。

ファンが想像するほど儲かるわけではない

馬主にいい馬を買ってもらい、厩舎に預けてもらうために、馬主を生産牧場や競走馬のセールに案内することも大切な仕事だ。いい馬を仕入れなければ成績は上がらない。そうした努力も必要になる。ある調教師はこう述懐した。「決して楽ではないし、皆さんが思っているほど儲かるというものでもない。競争も激しいし少し成績がよかったからといって安心もできない。馬に対しての熱意がなければできない仕事だと思う」。これは本音だろう。

生き物相手とはいえ、調教師の生活に休みと呼べる日はなかなかないというのが実情だ。以前よりもはるかに大変な仕事になったというのが取材するわれわれの実感でもある。トレセンの厩舎だけで戦うのではなく、そこを含めたより大きなチームで戦う時代になった。すべてを1人で把握して指揮することも難しい。それぞれの分野で信頼できるスタッフが必要な時代に変わった。

それでも調教師として管理馬が大きなレースを勝てば名誉と大きな充実感を得ることができる。それを目標に日々の努力を続けている。

今は海外遠征も当たり前の時代になった。日本のGⅠだけでなく世界のビッグレースを制するチャンスもあり、夢が広がっている。現代の調教師たちは、世界の頂点に立つ夢を抱き、競馬に真摯に向き合っている。調教師をはじめとする厩舎のスタッフの努力を思い浮かべながらレースを見てみると、競馬に携わる人たちの熱い思いが理解できるかもしれない。

高橋 利明 福島民報 記者

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たかはし としあき / Toshiaki Takahashi

1965年生まれ。子どもの頃から地元の福島競馬場に通う。1989年に成蹊大学卒業。入社2年目の1990年に念願の福島民報社競馬担当記者へ。1993年から本紙予想を担当。福島テレビ、ラジオ福島の競馬中継にも出演。永遠のアイドルホースはハイセイコー。競馬の現場記者であり続けることが目標。
 

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