競馬の調教師、「調教」以外も仕事は山盛りだ

競走馬と向き合い、休みのない日々の生活

標準的な厩舎なら20馬房で、そうなるとトレセンに入厩できるのは20頭ということになる。厩舎に所属できるのは馬房数の最大2.5倍。20馬房で管理馬が50頭いればトレセンと牧場を往復しながら出走が近い馬と出走直後の馬をうまく入れ替えてやり繰りしなければならない。現役だけでなく将来的に入厩する予定の若駒も含めれば80頭から90頭を管理することになる。

以前の調教師は、馬を入厩させてくれる馬主探しに困ることはあまりなかった。昔の有力調教師なら牧場を回る際にも、馬主が経費を負担していた。ところが、今は調教師が有力馬を入厩させるために奔走する時代になった。美浦のある若手有力調教師は「移動の経費だけでも大変です」と言う。北海道の生産牧場や美浦近郊の調整のための牧場だけでなく、馬主の都合で関西や九州の牧場にも管理馬を預けている。調教師は移動だけで年間500万円から多ければ1000万円もかかるという。

調教師の「1週間」はとにかく忙しい

調教師は1週間をどう過ごすのか。週末のレースに向けた毎日の動きを美浦の若手の有力調教師に聞いてみた。

馬の調教は朝が早い。馬が馬場入りするのは季節によって変わるが、基本は午前6時から、と考えていいだろう。スタッフは午前3時ごろ厩舎に行って担当馬の状態をチェックしたり、馬房を掃除したり、運動するために馬装を整備する。曳き運動(歩行訓練)などで十分ウォーミングアップしてから、毎週水曜日(厩舎によっては木曜日のところもある)は強めの調教をして、目安となるタイムを計測する。これは俗に「追い切り」と呼ばれる。

もちろん調教師はこの指揮を執り、週末に出走する馬を中心に状態をチェックする。追い切りを強めにするか軽めにするかメニューを決めるのも調教師の仕事だ。スタッフはこの後、馬のクールダウンを行い、馬装を外して洗い場のシャワーで馬の汗を流して脚元など馬体を細かくチェック。異常がないことを確認して馬を馬房に入れて馬のご飯である飼い葉を与える。

厩務員は1人で2頭担当しており、このルーティンを繰り返す場合が多い。午前中いっぱいはこの作業に追われる。午後にも馬の手入れ、寝わらの片付け、飼い葉を与えるなどの作業があり、1日の仕事を終えるのは午後5時ごろになる。調教師は追い切りの時計をチェックして状態を把握したり、合間に競馬専門紙やスポーツ紙などマスコミの取材を受けたりと忙しく過ごす。

木曜日は朝に管理馬の状態をチェックした後、美浦近郊の牧場に預けている馬の状態を見に行く。午後には戻って週末に出走させる馬の出馬投票を行う。金曜日もトレセンや近郊の牧場で管理馬をチェック。午後には週末に管理馬を出走させる競馬場へ移動する。土曜日と日曜日は出走させた管理馬のレースに立ち会う。出走する競馬場は1日に1カ所とは限らない。場合によっては福島競馬場で午前中の早いレースを見た後、午後には東京競馬場に移動しているということもある。

金曜、土曜、日曜の夜は馬主との会食などが当たり前のようにある。もちろん金曜、土曜、日曜もトレセンでは馬の調教が行われている。トレセンの休日は月曜日。しかし、調教師はこういうときこそ北海道の生産牧場を回ったり、遠方の牧場に出掛けたりして、管理馬の状態を把握する。

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