新専門医制度、「地域医療ファースト」の波紋 都市部の募集人員に「上限」
さらに都市部への集中を防ぐため、東京、神奈川、愛知、大阪、福岡の5都府県については、過去5年間の都市部の専攻医の採用実績の平均値を上回らないようにすることを「運用細則」に明記した。
しかし、都市部の定員を厳しく制限すると、他の県に医師を派遣していた大学病院が、自院の診療機能を落とさないために派遣医師を引き揚げる恐れもある。このため、地域医療に不都合が生じた場合は調整したり、仕組みを見直したりする方針だ。
医師不足地域の連携施設、指導医確保で“救済策”も
専攻医を受け入れる中小病院などの連携施設は不可欠な存在だが、課題や問題点もある。原則として専攻医3人に1人の指導医が付くが、医師不足の地域では、常勤の指導医を確保できない連携施設が少なくないとみられる。このため、同機構は“救済策”を用意。指導医が連携施設に常時いなくても、テレビ会議を開催したり、指導医が施設を定期的に訪問して指導したりすれば、研修が可能とした。ただし、研修の質を担保することが「必要条件」だ。
同機構は専攻医の待遇も明確にした。研修は「職場内訓練」と位置付けられており、それぞれの研修施設が専攻医に給料を支払い、健康保険にも加入させることになる。妊娠や出産、介護などで研修を中断する場合は「中断前の研修実績は引き続き有効」との見解を示しており、研修復帰に道が開けている。
都道府県、医師会、大学、病院団体などで構成する都道府県協議会も重要な役割を担う。各領域(内科、精神科、外科など19領域)の研修プログラムを同機構が承認するが、都道府県協議会と事前に協議することが求められているからだ。
今後、研修プログラムが適切かどうか、各都道府県協議会による審議が本格化するが、プログラムの修正を求められた場合、10月上旬に予定されている専攻医の一次登録などにも影響が出かねない。
来年4月の開始に向けてタイトなスケジュールとなっているが、12月上旬から来年1月上旬まで予定されている二次登録の終了後も研修先が決まらない希望者について、同機構は「空席のある各領域の基幹施設と連絡を取り、研修プログラムへの登録を可能とする予定」と説明。研修プログラムに参加する機会を制度開始直前まで確保したい考えだ。
(文:新井 哉)
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