「ドクター新幹線」が人の命を救う日が来る 新幹線は日本の地域医療を変えられるか
北海道新幹線の新青森・新函館北斗間の開通が2016年3月26日に決定した。ついに新幹線は北海道に上陸する。東海道新幹線が開通したのが1964年のことであるから、実に半世紀の時間をかけてようやく北海道に到達するのである。
この時間の長さは、東京からの距離に基づくものではあるが、それだけではない。率直に言って、需要が見込めないことが大きな原因である。すでに世界有数の輸送量を誇る札幌(新千歳)-羽田間の航空路は充実の一途をたどっており、鉄道は北海道と首都圏を結ぶ輸送機関としての首座を降りて久しい。
そうした不利な状況を乗り越えて、北海道に新幹線が来る。北海道民の新幹線への思い入れがいかに強いものであったかの証拠でもある。
新幹線は東海道開業の当初から、旅客輸送に特化してきた。鉄道はもともと貨物輸送のために発達した交通手段であったが、旅客輸送に特化することで、ダイヤが整理され高速輸送が可能になった。世界に冠たる新幹線システムは旅客特化を突き進んだことの賜物であった。
北海道新幹線は札幌までの全線開通を見据えると、旅客数の確保が最重要課題である。しかし、せっかくの新幹線であるが、旅客利用が低迷する可能性は十分ある。それが続けば、採算性が問題化するかもしれないし、巨額の投資を行った施設を有効に利用していないことにもなり、社会的な損失も大きくなる。
すでに関係各機関での旅客増に向けた取り組みが本格化している。しかし、その見通しは決して明るいものではない。
地方では通院に要する時間が長くなる
医療において交通手段の確保は、極めて重要なテーマとなっている。日本は国民の衛生状況の向上に伴い、感染症などの急性病が減少し、がん、糖尿病、高血圧などの生活習慣病が広まった。これを疾病構造の転換という。
生活習慣病は罹患期間が長期となり、また、完治することが少ない疾患である。その間、入院を要するような状態になることは少なく、長期にわたって通院を続ける必要がある。従って、自宅と病院との間の通院手段を確保しなければならない。
大都市であれば、病院は自宅の近隣にあり、公共交通機関も充実しており、問題は少ない。しかし、地方では病院は地域の拠点都市のみにあり、通院時間は飛躍的に長くなる。とくに、病を抱えた人が自ら自家用車を運転することは、現実的ではない。バス、鉄道を使って、長期にわたって通院しているのが現実である。
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