「ドクター新幹線」が人の命を救う日が来る 新幹線は日本の地域医療を変えられるか
国の医療政策では、天井知らずの医療費の伸びを抑えるために、入院治療を制限する方向性を打ち出し、実施している。つまり、今後も通院による治療を受ける患者の数は減ることはなく、むしろ増加しているといえるのである。
医療と交通の関係をより強くする、もう一つの要因は、地方で進む、医療の集約化である。日本では医師が地域的に偏在化しており、地方においては医師不足が進行している。そのため、すべての市町村が総合病院を保有することは現実的でなく、少ない数の医師で、効率的に診療を行うために、病院を集約し、地域の拠点都市にのみ総合病院を置こうとする取り組みが進められている。これも、当然のことながら、通院時間、距離が延び、公共交通の重要性が増しているのである。
さらに、地域の拠点病院がすべての専門家をそろえることも難しいという事態となっており、地域の拠点病院から大都市の専門病院への二次救急および患者転送ということも、日常化している。この転送には救急自動車が使われる。しかし、地方では救急自動車の配備数限られており、患者転送のために長距離長時間にわたって救急自動車が占有されると、その間に発生する救急搬送の要請にこたえられない事態も起こりうる。
新幹線のスペースを有効活用
しかし、救急自動車を増備することは、救急隊員の養成や車両が高価であることなど、財政赤字に悩む地方自治体にとって容易なことではない。また、救急自動車による長距離搬送は、交通事故を引き起こすリスクを高めることになる。実際、搬送中に交通事故が起こり、新たな救急自動車の出動を要請することになることは、決してまれではない。患者転送手段を救急自動車のみに頼る状況は、改善が必要なのである。
私は北海道の医科大学に在職し、医学部長なども経験しているところから、北海道における地域医療の現状や問題については、よく理解しているつもりだ。一方、青森県下での地域医療の現状については、明るくない。そこで、本稿では、札幌開業を視野に入れて、北海道内における新幹線の医療での利用法について考えてみたい。
開通する北海道新幹線は、旅客増を図る努力と平行して、スペースの有効活用についてもっと積極的に検討してもよいように思われる。そこで、地域の拠点病院から大都市の専門病院への二次救急搬送、および患者転送に、新幹線を利用することを提案する。
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