ハービーはなぜ前代未聞のハリケーンなのか ヒューストンは極めて災害に弱い街

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ほとんどのハリケーンや暴風雨は、風に押されて進む。上陸後も同様だが、次第に勢力が弱まっていく。今回は、2つの高気圧が互いに押し合って「無風地帯」(デッドスポット)が生まれ、ハリケーンが同じような場所に長時間とどまったり、一時はメキシコ湾の海上にコマのように押し戻されたりした。

このような状況が生じるのはまれで、テキサスにとって「不運だった」と、フロリダ州立大のジェフリー・シャノン氏は言う。

「このハリケーンは、風の流れの中のデッドスポットに偶然はまってしまった。だが、今後数日の間に再び動き出す兆しがある」と、シャノン氏は分析する。

上陸前に、急速に発達したのはなぜか。

温かいメキシコ湾の海水の影響で、ハービーは勢力を増した。また、ハリケーンの構造を阻害して水分や熱を奪う、「ウインドシア」と呼ばれる風向きや風速の急変がなかったことも勢力拡大に貢献し、ハービーは上陸前にカテゴリー4のハリケーンとなった。

「沿岸部に近づき、海水温が30度近い海の上に来るまで、特段勢力は強くなかった」と、シャノン氏は言う。

地球温暖化など気候変動の影響はあるか

気象専門家は、ハービーと気候変動を直接結び付けることはできないと話す。ハービーを失速させ、同じ地域に長時間とどめた風の作用は偶発的なものだったとみられている。

だが降雨量の多さについては、大気中の湿度を高める地球温暖化の影響を受けたようだ、と世界気象機関は指摘。

気候変動がハービーを生んだわけではないが、それを悪化させた要因だと今後の研究で断定される可能性がある。テキサスを拠点に気候関係の会社を運営するハル・ニーダム氏は指摘する。

大洪水を起こした要因は他にあるか。

大都市ヒューストンでは、コンクリートなど水を通さない表面で覆われた市街地が広がっていることに加え、川の堆積作用でできた平地だったことも、豪雨の影響を悪化させたとシェファード氏はみている。

「ヒューストンは極めて災害に弱い街であり、そこにハリケーンが停滞し、さらに大量の降雨があった」とカマルゴ氏は語る。「1つ1つは大した問題ではないが、すべてが一度に起きたため、最悪の事態を招いた」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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