普通の親が「モンスター認定」される背景事情

「学校に要望をうまく伝える技術」はある

私にもこういう経験があります。事務室の電話が鳴ったので出てみると、いきなりすごい剣幕で「先生は、体育着を忘れた子には体育の授業を受けさせないんですか?!」と食ってかかられたのです。当然、こちらは何のことかわからないわけですが、よく聞いてみると担任の先生にひと言言いたかったということでした。電話に出た私の声がその担任の先生の声に似ていたので、てっきり当人だと思い込んでいきなり話し始めたのです。確かに体育着を忘れただけで体育の授業を受けさせないというのは間違っていますから、その親が言っていることは正しいのです。でも、言い方には問題があると言わざるをえません。

目的は怒りをぶつけることではない

はじめから「文句を言ってやる」という姿勢で臨むと、学校側も守りに入らざるをえません。それでは、結局、子どものためになりません。内容、状況により怒りたくなる場合もあるでしょうが、その感情を前面に出すのでなく、「悩みを聞いてほしい。相談に乗ってほしい」という感じで臨むほうが合理的です。

目的は怒りをぶつけることでなく、子どものために問題を相手と一緒に解決することだからです。そこで重要になるのが、冒頭での雰囲気づくりです。「いつもお世話になっています」など、大人として当然のあいさつは必須です。

さらに、「うちの子、先生が大好きみたいで、いつも先生の物まねをやってるんですよ」「先生に絵のことを褒められたって、うれしそうに話してくれました。ありがとうございます」などの言葉があると、雰囲気がよくなります。そのうえで、「実は、ご相談したいことがありまして……」と本題に入っていきます。こういう大人の交渉術は本当に大事です。

これなら、学校側も「しっかり話を聞こう。子どものためにお互い協力して取り組もう」という気持ちになれます。「何でそこまでへりくだる必要があるのか?」という声も聞こえてきそうですが、すべては愛しいわが子のために、少しでもよい結果をもたらすための戦略と割り切ればいいのではないでしょうか。

ところで、ここまで便宜上モンスターペアレントという言葉を使ってきましたが、私はこの言葉は適切でないと考えます。これは一種のレッテル張りであり、学校側が「この親はモンスターペアレントだ」と決めつけてしまうと、相手の話を誠意をもって聞こうとする気持ちがなくなってしまうからです。

親たちの中には、経済的・時間的・精神的に追い詰められている人たちもいます。仕事やおカネのやりくりで疲れているところに、わが子から「今日○○で嫌だった」と聞かされると、じっくり話を聞いたり誰かに相談したりする余裕もないまま、いきなり行動に移してしまうということもあるわけです。ですから、最後に学校にお願いしたいのは、モンスターペアレントと決めつけないで、まずはじっくり共感的に親の話を聞いてほしいということです。

親も学校側もお互いに感情的になるのでなく、冷静にコミュニケーションをして、子どもの問題の解決につなげてほしいと願っています。

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