「モンスターマザー」は、ここまで恐ろしい 加害者と被害者が入れ替わるまでのすべて
世の中に対する前提条件が崩れ去っていく
一晩で一気に読み終えたのだが、背中からは嫌な汗が流れていた。とても、他人事ではいられない。こんなことが起こりうるなら、普通に暮らしている人がある日突然、殺人犯に祭り上げられても、全然不思議ではないだろう。自分の中で想定していた、世の中に対する前提条件が、もろくも崩れ去っていくような印象すら受けた。
「丸子実業高校バレーボール部員自殺事件」は、2005年にバレー部に所属していた同校1年生の高山裕太君が自殺した事件である。当初、運動部内でのいじめを苦にしていたことが原因とされており、母親はむせび泣きながら学校の対応不備を訴え、その後、母親側の代理人が校長を殺人罪で告訴するまでに至った。
しかし実態は、まるで違ったのである。2008年に長野地裁が下した判決では自殺の要因がいじめであったと認定されず、逆にバレー部から母親側への「精神的苦痛」に対する提訴については全面的に認める判決が下された。
本書『モンスターマザー』は高山裕太くんが自殺に至るまでのいきさつ、その後、事件が世間に知られていくまでのプロセス、さらに母親側と学校側との間で加害者と被害者の構図が入れ替わっていくまでの全貌を、徹底的な取材に基づいて描き出した一冊である。
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