最近バノンとマクマスターが一番対立していたのはアフガニスタン問題です。「撤退するべきだ」とするバノン・トランプに対し、「増派するべき」としていたのがマクマスター。その線上にマクマスター辞任という話が出てきたのですが、ケリーの後押しで結局バノンが解任、そして21日にはトランプ大統領自身がアフガニスタン駐留の継続を発表しました。結果としてこれで、マクマスター・マティスのいわゆる軍人ラインにトランプ大統領が乗ったことが明らかになりました。
トランプ政権は安定する可能性すらある
ここから先は、考え方は二つあります。
トランプ人脈はバラバラになったものの、まだ「トランプファミリー」(長女のイバンカ・トランプ及び、その配偶者であるジャレッド・クシュナー)は健在です。
一方、力を増した軍人、グローバリスト、大企業などの従来からの共和党支持者が力をもつなら、議会で主導を握っているわけですから、政権としてはむしろ安定化する可能性すらあります。
リスクは先日のシャーロッツビルでのトランプの発言で、共和党内の影響力の強い、ユダヤ系議員がどうでるか、という点に尽きると思います。一時、ゲーリー・コーン国家経済会議委員長兼経済担当大統領補佐官の辞任もうわさされましたが、彼はユダヤ系なので「人種差別に関する発言には耐えられない」と言った、とも伝えられました。また、人種差別発言に対しては力を持ちつつある軍人系の人達からも反対の声が出てきており、ここで彼らが一枚岩になる可能性は十分で、反トランプの機運が一気に盛り上がる可能性も一方ではあります。
マーケットが妙に静かなのは、どうもこの前者のシナリオを見ているようで、であればウォールストリートにとっては実に居心地がいい政権が出来上がることになります。
貿易問題も同様で、最も強硬だったバノン自身がいなくなってしまい、伝統的共和党志向に戻ってくる、ということになれば、それほど強硬なこと(スーパー301条の適用など)を言う理由はなくなってきます。ああいう強硬な貿易政策はすべてアメリカ・ファーストの人々が主張していたことですから、誰もいなくなってしまい、親分までいなくなってしまうなら、もう共和党としては無理してやる必要のない政策と言えるでしょう。そもそもTPP(環太平洋経済連携協定)に賛成していたのは共和党なんですからね、どうするんでしょうか。
いずれにせよ、マーケットはこれらのことから「安定」と読み取っているのが今の姿といえるでしょう。マクロ経済統計も非の打ちどころがないくらい良いわけですし、株価も絶好調。裏付けになる企業決算もIT業界を中心にまさに「快進撃」を続けており、一番のリスクである「トランプがなんか変なことをやるかもしれない」というリスクがバノンと共に霧消した今、マーケットが混乱する理由はむしろなくなった、というのが正解でしょう。しばらくシートベルトサインは消したまま飛行を続けられそうです。
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