ソラコム社長、KDDIへの株譲渡の真相を語る 世界規模のIoT企業になる、そのために選んだ

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ソラコムはベンチャーながら、名だたる投資会社や企業から巨額資金を集めてきた。

出資者は投資会社のスパークス・グループが運営する未来創生ファンド(スパークスのほかトヨタ自動車、三井住友銀行が出資)や総合商社大手の三井物産、シンガポールの投資会社・テマセクホールディングス傘下のパビリオンキャピタル、LINEなどが主要投資家のインフィニティ・ベンチャー・パートナーズ、gumiなどに投資するwiLなどだ。これらの出資者は、ソラコム株をKDDIにすべて売却するとみられている。

KDDI子会社になっても「全速力で開発する」

玉川社長が起業した背景には熱い思いがある。IoTの通信プラットフォームをクラウド上で構築・提供できれば、IoTの通信料は劇的に下げられる。そうすれば初期投資が軽くなり、中小企業でも気軽にIoTビジネスを始められるようになる。最新のテクノロジーを誰でも利用できるようにしよう。そんな思いがあった。

創業の地は東京・二子玉川の雑居ビル。入り口が狭くて薄暗く、ほかのメンバーは「こんなところで開発するのか」と愕然としたという。だが、そこから1年ほどで最も注目を集めるベンチャーのひとつに急成長した。

玉川社長は東京大学卒業後、IBM基礎研究所に入所。クラウド世界大手・アマゾンウェブサービスを経てソラコムを設立した。起業後、忙しい中で始めたのがトライアスロン。社内でも仲間が増え、トライアスロンはソラコム唯一の部活になった。9月には九十九里浜の大会への出場を予定している(撮影:今井康一)

基本料金は1日10円。複数のSIMをウェブ上で一括管理できる手軽さが受け、顧客数はサービス開始1年で3000社を超え、現在は7000社を突破している。玉川社長の下、「全速力で駆け抜けろ」を合言葉に次々と新サービスを開発し、料金を値下げし、顧客に還元してきた。

KDDIの傘下に入り、目標はどう変わるのか。玉川社長は「日本発のグローバルなIoTプラットフォームになる。この目標はKDDIの子会社になった後も変わらないし、全速力でサービスを開発し続けることも変わらない」と目を輝かせる。「日本ではあと2年半、海外ではもう少しかかるかもしれないが、ソラコムは必ず、世界のIoT通信プラットフォームになる」。

新進気鋭のベンチャーのビジョンは微塵も曇っていない。KDDIとのタッグでIoTにおける覇権を握ることができるのか。世界を見据えた挑戦は新たな局面を迎える。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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