証券アナリストを淘汰する新規制の"殺傷力" 「ミフィッド2」で大量失業時代がやってくる

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リサーチにかかわる料金体系はどう変わるのだろうか。現在、運用会社が証券会社に支払う手数料は、主に「ブローカーポイント」という評価ポイント制で決められている。運用会社は、毎月または四半期ごとに各証券会社にポイントをつけ、その総点に応じて株式の売買手数料を支払う。

この「ポイント」にはさまざまな評価項目がごちゃまぜに入っている。主なものは、アナリストのリサーチ提供、株などの売買の執行、投資先企業や重要人物などとの会合の設定などだ。ただ、定性評価が多いため、運用に直結しない要素、たとえば、運用会社と証券会社のアナリストやセールスマンとの親密度なども何となく含まれている。

ところがミフィッド2では、運用会社が外部リサーチを購入することは「原則として禁止」とされた。購入されたリサーチが本当に投資家のためになっているのかが不透明なためだ。

ただしこれには例外規定がある。例外的に認められるリサーチの購入のためには、運用会社は、どんなリサーチにどれくらい支払ったかを、おカネを預けている人や企業に対して明示しなければならない。リサーチ費用の年度予算は事前に決めることが義務づけられ、その予算を各チームに割り当てることになる。このため、データの必要性やその情報がもたらす価値がこれまでよりも厳しく精査されることになる。

一部の証券会社の"お品書き"は強気

ミフィッド2は、500ページにわたる複雑な法律で 、証券会社の間でもまだ戸惑いの声が多い。それでも、年明けの適用まで、あと4カ月しか残されていない。

このため、すでにいくつかの証券会社は、運用会社に課す手数料の体系案を提示している。世界の平均は、アナリスト・リポート購読料だけで、運用会社1社当たり年間800万円程度である 。アナリストへのミーティングや個別分析の依頼については、さらに1回につき数万円〜数十万円の別料金を要求するとみられる。

もっとも、これらのアナリスト料金の"お品書き"は証券会社によってかなりバラツキがあるようだ。たとえば英国のバークレイズは、リサーチのサービスレベルを「金」・「銀」・「銅」の3種類に分け、運用会社1社当たり年間400万円から5000万円を要求すると報じられている 。

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