日本人の「外国人観光客への偏見」が酷すぎる 「お・も・て・な・し」は五輪の年だけなのか

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そこの朝市の食堂での出来事です。相席だった一人旅の中国人女子学生に、まず店員はマニュアルどおり、「ワサビは大丈夫ですか?」と聞きました。私に対する聞き方に比べても、随分ぞんざいなのが気になりました。学生は「はい、大好きです」と答えたのに、出てきた海鮮どんぶりに、ワサビがついていなかったのです。学生が片言の日本語で「ワサビをください」と催促しますと、中年の女性店員は謝りもせず、小皿に入れたワサビを放り投げるように置きました。

「忙しい店だから、余裕がないようね。ごめんね」と、思わず私がその観光客に謝りました。彼女はひと言、「大丈夫です」と言ってくれましたが、私ならその無礼に怒って、食べずに帰る場面でした。偶然相席にされた私に対する態度と随分違ったので、明らかにこれは、彼女の国の人に対する思い上がった態度であると断言できます。

日本にとって「お荷物」なのか

私はこれは、ステレオタイプ化した外国人観光客に関する報道の仕方にも責任があると思います。民泊を利用するインバウンドに関する記事には、「ゴミの分別ルールを守らない」「周囲の迷惑構わず騒ぐ」と付記されることが多く、直接インバウンド観光客と接したことのない人にまで、まるで彼らが、日本にとってお荷物でしかないような、結果的に印象操作になっているのを感じます。

「爆買い」報道でも、何かにつけて上から目線だと感じましたが、考えすぎでしょうか。かつては日本人も、パリのブランド街で爆買いした時代がありましたし、「日本を売ってニューヨークを買おう」とあるニュースキャスターが冗談を言ったほど、ニューヨークのあらゆるものを日本人が買い漁った時代もありました。ある国の人が、より先進国で爆買いをするのは、何も今の中国の人に限ったことではありません。

ほんの3名に聞いただけですが、東京のタクシーの運転手さんが、一度もインバウンド観光客を乗せたことがないのに、「マナーが悪いから乗せない」と言ってはばからないのは、ステレオタイプ化した報道による影響の一例ではないでしょうか。

許認可を受けたうえで、小さな民泊を経営している友人がいます。9割が中国人ゲストだそうです。開業してみて一番驚いたことは報道とのギャップで、世界観も中国人感も変わったと言います。皆さん礼儀正しく、これから多くのインバウンドを迎える日本人として、学ぶところが本当に多いと、語っています。

たとえば資源ゴミと空き缶などのゴミはオーナーが後で分別するつもりで同じゴミ箱を指定すると、「自分たちも本国で分別していますよ」と言って、皆さんきちんと生ゴミと3種類に分別されるそうです。その後もゴミ出しを守らない国民性だとは、感じたことがないということです。

お土産をくださるゲストも多く、8種類もの中国料理を作ってオーナーをもてなした家族や(干しエビや干し貝柱など、小さなダシ類を日本のスーパーで探すのが大変だったらしい)、ある女性グループはオーナーを招いて中国の少数民族の踊りをいくつも披露してくれたとか。

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