テレビ番組を変える新指標「視聴質」の正体 テレ東の「ニッチ」路線は、やはり強かった
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その「視聴質」を調査し、テレビ局や広告主へ販売しているのが、TVISION INSIGHTS(ティーヴィジョンインサイツ社)だ。同社の技術は、人体認識アルゴリズムを組み込んだ機械を導入し、「視聴質」の数値化を実現した。同社は、2015年6月からデータの取得を開始。現段階では関東エリアの800世帯でテレビの上にセンサーを取り付け、地上波6局7チャンネルの全番組やCMを、録画視聴も含めて1秒ごとにデータを集めている。最大6人まで識別が可能で、家族のうちの誰が見ているかも含めて把握できる。
家の中に第三者が設置したカメラが置かれている状態であるから、気になるのはプライバシーが覗き見されてしまうリスクだが、画像データはすべてデジタル化されて数字などの羅列に置き換えられる。「生の形で画像や映像を一切取得しない形としており、プライバシー侵害の問題は生じない」(TVISION INSIGHTSの郡谷康士代表取締役)。
TVISION INSIGHTSのセンサーは、視聴者の顔や、人体のデータをリアルタイムでトラッキングする。鼻や目など、顔の特徴点を細かく結ぶことで、個人の顔の形や動きを判定できるため、視聴者がテレビを実際に見ているのかはもちろん、笑顔になっているのかといった表情もわかるようになっている。
本当に視聴者が画面を見ているのかを測定
TVISION INSIGHTSの視聴質は、どのように数値として算出されるのか。まず、テレビがついていることを前提に、その前に誰がいるのか(Viewability)を分析。これで、どのような番組が、どういった視聴者を呼び込むか、どの時間帯に視聴者が集まるのかがわかる。
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さらに、人がテレビの前にいることを前提に、画面へ誰の顔が向いているのか(Engagement)を分析し、専念視聴の状況を認識できる。これは、どのようなクリエイティブやコンテンツが視聴者を引きつけているのかの評価を可能にする。15秒のCMも、1秒ごとの場面ごとに、視聴者がどのような姿勢で見ているか一目瞭然となるわけだ。
これらの数値を個人に紐付けてデータ化することで、世帯あたりの視聴人数であるテレビの前の「滞在度」であるビューアビリティインデックス(VI値)と、テレビに対する「専念度」を示す指標であるアテンションインデックス(AI値)を掛け合わせる。視聴率の上に視聴「質」という概念を弾き出すことができる。
たとえば、番組とCMの関係で視聴質を比較してみるとわかりやすい。CMに切り替わると画面から目を離すことは、誰もがやっていることだろう。特定の半年間の6局7チャンネルの平均的な滞在度合い、注視度合いを1.0とすると、TVISION INSIGHTSのデータによると滞在度(VI値)では番組が1.04、CMが0.99と約5%の差が、専念度(AI値)では番組が0.99、CMが0.78と20%の開きがあった。
また、視聴質は個人に紐付けて情報を取得できるため、属性に応じて柔軟にデータを出すこともできる。たとえば、「父親が1人で見ている番組」「夫婦で一緒に見ている番組」などを知ることも可能だ。今回、筆者がこの「視聴質」について記事化しようと考えたのは、そこに如実な特徴が表れていたからである。
具体的なデータをみてみよう。「夫婦で一緒に見ている番組」は、どのようなものが多いのだろうか。
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