JR6社が一致団結、「日本周遊列車」という奇跡

民営化直後にオリエント急行を招聘していた

富士山を借景に「欧州の芸術品」オリエント急行の客車が通過する奇跡の一瞬(筆者撮影)

アガサ・クリスティ原作の映画『オリエント急行殺人事件』での華麗な車内の人間模様、『007 ロシアより愛をこめて』の車内での甘いラブシーンと、一転してロシアのスパイとの壮絶なアクションシーン、そして日本人には縁遠い「国際列車」という響き……。長年のあこがれでありつつも、一度は廃止されたオリエント急行。その列車が1982年5月、「ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス(VSOE)」としてロンドン─パリ─ベニス間に復活を成し遂げた。

これには血が騒いだ。私はなんとか時間と費用を捻出してプラチナチケットといわれる乗車券を手に入れ、ロンドンからベニスへVSOEの旅人となった。オリエント急行は、それほど私の心をヒートアップさせる存在だったのである。

JR東日本の元副社長が奔走

当時、かつての豪華客車を復活させ走らせていたのは、VSOEのほかに「ノスタルジー・イスタンブール・オリエント急行(NIOE)」があった。こちらは貸し切りのツアー列車などに利用され、走行範囲も東ヨーロッパにまで及んでいた。だが、あのあこがれの列車がユーラシア大陸を横断し、日本にやってくるなどということは、まずありえないと思っていた。

ところが国鉄民営化直後に、オリエント急行をなんとしても日本で走らせよう、という構想が、フジテレビの開局30周年記念イベントとして持ち上がったのである。

当初、企画を立案したフジテレビ・沼田篤良氏の思いは、鉄道関係者や専門家の間ではことごとく否定されたという。日本とヨーロッパの鉄道には線路の幅をはじめ、さまざまな違いがあることから、海外の鉄道事情を少しでも知る者であれば、そんなことはまず不可能という答えを出してしまうのだ。

だが、この壮大なロマンに耳を傾けた人物がいた。発足したばかりのJR東日本副社長・山之内秀一郎氏だ。山之内氏は国鉄時代に欧州勤務の経験を持ち、海外の鉄道事情に精通していたこともあり、実現させる方向で話が進められたのである。走らせる車両はフレキシブルな運用ができるNIOEの貸し切り列車。国内走行にあたっての技術的な諸問題は、山之内氏のひと声で次々と解決していった。バブル絶頂期の1988年初頭のことであった。

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