「フランスの超天才」が予測する2030年の世界 ジャック・アタリ氏「国境はいずれなくなる」
2030年には、1500億個のモノが互いに、そして数十億人の人々とインターネットに接続されるという予測がある。モノのインターネット(IoT)も、ビッグデータの進化、識別システム(RFID、表面弾性波、光チップ)、センサー(ナノテクノロジー)の恩恵を被る。2025年、これらは4兆ドル(約440兆円)から11兆ドル(約1200兆円)の市場規模になると見込まれる。これは世界のGDPの7.5~21%に相当する。
建設現場や戦場をバーチャルに動き回れるようになる
3Dプリンタが産業界ならびに一般家庭に浸透するだろう。3Dプリンタの世界市場は、2013年の30億ドルから2025年には152億ドルの規模にまで達する見込みだ。産業界では、3Dプリンタの導入により、一部の製造現場は先進国に回帰し、一般家庭ではカスタマイズしたモノがつくられるようになる。
たとえば、日曜大工に必要な部品や道具、衣服、食器、家具、楽器、工芸品、さまざまな人工臓器などだ。ヨーロッパの宇宙旅行社は、2030年に月面で3Dプリンタを使って月の表土から宇宙基地をつくろうとさえ計画している(月面には隕石のチリが大量にある)。
拡張現実や仮想現実の道具を利用すれば、ホログラフィー対応のスマートフォンで通話中の相手を3Dで眺めることができるようになる。
今後、15年間に進化する視線追跡(アイフルエンス社)と顔追跡のテクノロジーにより、現実と仮想の相互作用が促される。スクリーンを利用せずに拡大した現実に、われわれのデジタルデータを投影することが可能になるのだ。建設現場や戦場をバーチャルに歩き回ることができるようになる。現実と仮想が行動および思考において混ざり合う。
ブロックチェーンは、誰もがプラットフォームなしで安全に情報交換できる画期的な技術である。この技術により、たとえばウーバーやエアビーアンドビーなどの仲介業者は不要になるかもしれない。いくつか例を紹介すると、イーサリアム(ビットコインの次に時価総額が大きい仮想通貨)により、仲介役なしで安全に契約を締結できるようになる。
コロニーは、個人の貢献の度合いに応じて自動的に報酬額が決まるシステムをつくって世界中の才能をつなぎ合わせようとしている。
オーガは、市況を占うために「みんなの意見」を利用してはどうかと提案する。電子マネーのビットコインはブロックチェーンの技術を利用してできた最初の例だ。ビットコインがもたらす影響は極めて大きいと思われる。
企業は、人工知能(AI:人間と同様の知能を再現することを狙う先端技術の総称)を使って自律的な情報システムを構築し、個人は、学習、会話、知覚、作曲、感情の刺激のために人工知能ロボットを利用するようになる。
このロボットの登場により、ヒトと人工物との違い、すなわち、「死すべき存在」と「不死の存在」との差は縮まる。
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