「ジブリ」宮崎吾朗監督が語る父への思い 「作ることが生きること」

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『紅の豚』でフィオがレモネードを飲むシーンの作画 (C)Museo d'Arte Ghibli (C)Studio Ghibli

こういうのを描く場合、普通使うのは明るい色と影の色ぐらいなんです。でも、ここではガラス瓶の透けている色、レモネードの色、レモネードの影の色、瓶の底の濃い色、さらにハイライト。瓶だけで合わせて8色もつかっています。フィオが持っている瓶を、いかにもそれらしく描いている。だからおいしそうに見える。

原画があって、それを作画監督が手直しして、宮崎監督から「レモネードの水面をゆらせ」「喉がゴクゴク」という指示が追加されたりする。細かいことをきちんとやることで、全体としてそれらしく、おいしそうに見えるカットになっています。

シンプルでブラッシュアップされた描き方

――おいしそうに描くには「細かく丁寧に描く」というのがいちばん大事なことなのでしょうか。

ばか丁寧にやればいいというものではありません。セルアニメーションは、線で描いて色を塗って表現します。そうすると「これ以上は描き込めない」という制約が自ずと出てくる。逆に言えば、どんなに描いても効果的に見えない場合もあります。どれぐらい省略して、どれぐらい誇張するかということを考えます。

例えば、「ラーメンに浮いている油」を描いた場合、「実物と並べると全然違うじゃん」となります。けれど絵の中でみると、「おいしそうに本物らしく見える色」になる。リアルじゃなくて「それっぽく見える」ということですね。

『崖の上のポニョ』に登場するラーメン (C)Museo d'Arte Ghibli (C)Studio Ghibli

制約がある中、シンプルだけどいかにブラッシュアップされたものを描いていくか。これは経験値がないとわかりません。「ここまでやれば効果がある」「これ以上描いたら意味がない」「これじゃあ物足りない」とか。今回の展示で、僕のほうが「なるほどね。こうやってやればいいのか」と改めて勉強する機会になりました。

よく宮崎監督は「おいしそうに描くには、色は3色でいい」と言うんです。例えば目玉焼きです。宮崎作品には、よく目玉焼きがでてくる。それも大体、ベーコンエッグなんですよ。宮崎監督は家でも必ずベーコンエッグ。作り方にすごくうるさいんです。

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