証券会社は、現在明らかに銀行預金よりも優位にある「個人向け国債変動金利型10年満期」でまず顧客の資金を導入して、1年後からこの資金に対して牙を剝くという時間差攻撃を行う。これは、なかなか考えられた戦略だ。
しかし、もちろん、顧客が個人向け国債を買ってから1年後に、毎月分配型投資信託や、外貨建ての貯蓄性保険のような、商品に誘導されることは宜しくない。親御さんがそうならないように、全力で防がねばならない。
読者が帰省された際に、親御さんには、「証券会社の人に何を言われても、個人向け国債は売ってはいけないよ」とお伝え頂くことが有益だ。筆者は、交通が混み合うお盆の時期には帰省しないが、今年は北海道の実家に寄る用事があるので、母親にこう言うつもりだ。
また、時間があれば彼女の口座がある証券会社に寄って、「彼女には、金融商品の勧誘をしないで下さい」とお願いに行こうと思っている(証券会社によっては、勧誘しない方がいい顧客のリストを「イエロー・リスト」と呼んでいるらしく、「うちの母をイエロー・リストに乗せて下さい」と伝えるとスムーズらしい)。
親のおカネの「ありか」を確認せよ
例えば、読者の親御さんが、どこかの銀行に「へそくり」を預金しているとする。へそくりだから、他人には知らせていないわけだが、親御さんが、急死されたり、あるいは急に認知症になったり、健康であってもへそくり預金のことを忘れてしまったり(十分ありうる!)した場合、この預金が手の届かないものになる可能性は小さくない。
10年間資金の動きがない預金は「休眠預金」として、銀行本店の利益の形で吸収されてしまう。そして、銀行の書類保管義務は10年なので、10年以上前の預金口座の動きを追うことは難しい。筆者は、あるメガバンクで、退職金が振り込まれた後の父の預金口座の動きを追ってみたいと依頼したことがあるが、10年以上前のデータは出して貰えなかった。
本人が死亡した後に、遺族が預金通帳、印鑑などを持ち込むことが出来た場合、銀行が「預金を払い戻してくれる可能性はある」が、これは、銀行の好意に基づく判断に過ぎず、確実に期待できるものではない。
銀行預金、証券口座など、「金融資産の在処(ありか)」は、親御さんが、配偶者なり、子供なりの「信頼できる相手」と情報を共有してくれるといいのだが、少なくとも、どこかに書き残しておいてくれるように頼んでおこう。ただ、特定の子供とだけ情報共有するようになると、相続時に揉めたりする場合もあって、情報の共有はなかなか難しい問題を孕む。
「信頼の出来る相手」を持つことは、誰にとっても人生の大きな課題だ。判断力が怪しくなった高齢者に、司法書士などの「後見人」を付けた場合、後見人が金融機関と結託してしまうケースもあると聞く。
おカネの問題は、いくつになっても油断できない。
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