外国人観光客は「どの国」から呼ぶのが賢いか 脱アジア偏重で日本は「世界の観光大国」に

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ちなみに、興味深いのは2030年までに一番伸びる地域がアフリカとされていることです。この地域のマーケットは現在まだ小さいですが、伸び率では世界一です。アフリカからの外国人観光客というのは、日本はまだ見ぬマーケットですが、ここにもさまざまな可能性が秘められています。

「地域別潜在能力」という考え方

UNWTOによると、同地域内を観光するケースは80%。それに対して「ロングホール」といって、地域外の遠い国まで観光に行く割合は20%です。これをふまえると、訪日観光客の「地域別潜在能力」が計算できます。この潜在能力のうち1割が、1年の間に実際に訪れるといわれています。

現在、アジアのアウトバウンドマーケットは2億9000万人で、世界第2位です。訪日観光の潜在能力はその8割なので2億3000万人。欧州のアウトバウンドマーケットは5億9000万人で世界一ですが、遠方なので潜在能力はその2割の1億2000万人、アメリカは2億人ですので、潜在能力は4000万人となります。

このようにして訪日観光の地域別潜在能力をはじきだしていくと、訪日観光全体の潜在能力は3億9000万人。アジアからの観光客が占める割合は2億3000万人÷3億9000万人=59%というのが、健全なポートフォリオです。しかし現在、アジアからの訪日観光客は全体の85%を占めています。

つまり、UNWTOの分析に基づけば、日本の観光は「アジア偏重」という結論になるのです。

では、どうすればこの「アジア偏重」が解消できるのでしょうか。実はこの分析からは、アジア以外にどのマーケットにチャンスがあるかもわかります。潜在能力と今の進捗を比較すればいいだけです。

先ほども申し上げたように、世界第2位であるアジアからのアウトバウンドは今後も順調に成長していく重要なマーケットです。しかし、アジアからはすでに2000万人を超える観光客が訪れています。これは潜在能力の10%である2300万人のうち、9割を達成している計算となります。だからこそ、アジアからのインバウンドの伸び率が最近低下しているのです。

カナダ、南米を含めたアメリカ方面からのアウトバウンドに関しては、4000万人の10%ですので、1年間に400万人の訪日が期待できるはずです。しかし現在は160万人程度しか来ていませんので、潜在能力の40%しかひきだされていないということです。

しかし、最も未開拓なのは、世界一である欧州からのアウトバウンドです。

欧州は1人当たりGDPの高い国が多く、「ロングホール」の観光客が多いのが特徴です。訪日観光の潜在能力は1億2000万人で、10%の1200万人が訪れることが期待できますが、いまの実績は140万人(12%)にとどまっています。

それは裏を返せば、まだ88%もの潜在能力が残っているということです。今後もっとも期待できるマーケットは、欧州なのです。

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