外国人観光客は「どの国」から呼ぶのが賢いか 脱アジア偏重で日本は「世界の観光大国」に
では、なぜ私が「観光」の重要性を訴えているのか。それは自分自身やビジネスにメリットがあるからではなく、客観的な分析を行えば行うほど、「動かしがたい事実」だということが浮かび上がり、日本がとるべき政策だという結論に結び付くからです。
日本の観光を「データ」で分析する
このような「証拠に基づく政策立案」はEvidence Based Policy Making (EBPM)と呼ばれ、ビッグデータの進化によって世界的にも常識となってきています。
かつては、専門家の肌感覚や経験に基づく推測などによって政策が決められてきました。日本でも声の大きい人、権力をもつ人たちの「第六感」で政策が進められてきた時代もあったことでしょう。
しかし、今日はさまざまなデータを収集して、一定の根拠に基づいて政策決定をすることが当たり前になりました。根拠があるので、昔よりも成功の確率が上がっている、とも言われています。
日本の「観光」もEBPMに基づいて進められるべきなのは、論を待たないでしょう。
それをわかっていただくため、今回は趣向を変えて、国連世界観光機関(UNWTO)が発表した「UNWTO Tourism Highlights 2017」をもとにした分析をご紹介しましょう。このなかには世界の観光産業を客観的に分析したデータが多くつめこまれていますので、みなさんの判断のお役に立つのではないかと思います。
諸外国では、観光戦略はデータ分析を徹底し、実行されています。「最近、中国人観光客をよく見かけるからもう呼ばなくていいのではないか」という肌感覚ではなく、どの国からどの客を、どの観光資源を整備することで呼び込み、いくらの支出を狙っていくのかという考え方をします。
それをふまえて「UNWTO Tourism Highlights 2017」を見ていくと、日本の進むべき道が見えてきます。
2015年、世界全体の国際観光客はのべ11億8600万人でした。どの地域から出発しているかを示す「アウトバウンド」を見ると、欧州発の国際観光客は5億9400万人。全体の50.1%で、世界一のマーケットとなっています。
これは1990年の57.7%からは低下していますが、それでもまだ世界の「外国人観光客」の半分は欧州から出かけているということです。
2030年までに世界のアウトバウンドは18億人まで増えると予想されています。その成長を牽引するのはアジア発の観光客で、欧州からのアウトバウンドは全体の4割程度にシェアを下げるとみられています。しかし、それでもまだ世界一に変わりはありません。欧州のマーケットをとることは、極めて大切になっています。
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