その点では、トランプ大統領の立ち位置のほうに分がある。今回の大陪審招集も、大統領がミュラー氏解任を、またもや企んでいるのではないかということをミュラー氏自身が嗅ぎつけ、反射的に行動を起こしたのではないか。この大陪審招集によって、トランプ大統領がミュラー氏を即座に解任できなくなったことは確かだからだ。
しかし、ミュラー特別検察官の解任が消えたからといって、それがトランプ政権へのダメージに直結するわけではない。大陪審は、いわば起訴の前段階ではあるが、起訴に動く場合もあれば、動かない場合もある。審理が何年にも及ぶケースもある。
ニューヨーク州とワシントンDCの弁護士として長年働いてきた筆者の経験からしても、今回のミュラー特別検察官による、自己の政治的な立場を防衛するための大陪審招集は、弾劾リスクとはならない。
ミュラー特別検察官の捜査のインパクト
再選を目指す準備に入ったと米メディアで大きく報じられているトランプ大統領。その再選の確率はどの程度か。大統領選の確率を分析できるのは、せいぜい半年前というのが常識である。ただ、そもそも論として現段階の支持率と再選確率とは違うとトランプ大統領は見ているのに対して、米メディアは30%台と低い支持率と再選確率は同じと見ている。
いま最も注目すべきは、トランプ再選確率に対してミュラー特別検察官の捜査の動きがどう影響するか、その度合いの分析である。トランプ政権側はミュラー氏の捜査の行方が再選にどう影響するか、その分析に精力を注いでいる。
トランプ政権側はミュラー特別検察官側にいろいろな働きかけをしている。裏読みすれば、ミュラー氏の捜査の再選への潜在的なマイナスインパクトを計量化し、推定している。そんな高度は分析手法に比べて、米メディアによる分析は手薄だ。
結論的に言うと、トランプ大統領の再選イメージを曇らせているミュラー特別検察官の動きは、ミュラー氏に味方したい米メディアにとっても雲をつかむような話だ。米国では、「法は人なり」という人物主義の側面が強い。反射的に感情的行動に出るミュラー氏の捜査パフォーマンスから判断すると、その捜査の再選への影響度は加速度的に小さくなっていくのではないか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら